米USTR、メキシコ政府に横浜ゴム工場の労働問題の確認要請

(米国、メキシコ、日本)

ニューヨーク発

2026年09月30日

米国通商代表部(USTR)は9月25日、メキシコ・コアウイラ州で建設が進む横浜ゴムのタイヤ工場で、労働者の団結権および団体交渉権が侵害されている疑いがあるとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に設けられた「事業所特定の迅速な労働問題メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

RRMは、USMCA締約国内の事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで(注1)、労働権侵害が確認されれば、USMCA特恵措置の適用停止などの罰則が科され得る。RRMに基づく事実確認の要請は締約国政府が独自に開始できるほか、労働組合などの第三者機関が締約国政府に対して申し立てることも可能だ。

今回USTRは、メキシコの労働組合であるメキシコ労働総同盟(Liga Sindical Obrera Mexicana:LSOM)および労働者を支援する国際弁護士ネットワーク(ILAW Network)からの申し立てに基づき、事実確認を要請した(注2)。申し立てでは、LSOMを支持する労働者に対する不平等な扱いや、ゴム製造業界で定められている団体協約の不順守などにより、横浜ゴムが労働者の団結権と団体交渉権を侵害していると主張している。

事実確認の要請を受けたメキシコ政府は、USMCAに基づき、調査を実施するか否かを10日以内に回答し、実施する場合は45日以内に調査を完了する必要がある。また、今回の確認要請に伴い、米国は当該工場から輸入される製品について、最終的な税関の清算を当面留保する。

なおUSTRは今回の発表で、横浜ゴムが2026年3月にバージニア州セーラムの製造工場を閉鎖し、約600人の米国人労働者が解雇されたことを受けての措置であることに言及した(注3)。カナダのピーコック・タリフ・コンサルティングは、9月28日に発信したアラートで、USTRがこの点に言及したのは異例だと指摘した。その上で、今後、USTRがRRMを労働慣行の順守のみならず、米国外への生産移転やそれに伴う米国内の雇用喪失といった問題にも結びつけて運用する可能性があるとの見方を示した。

(注1)ただし、米国・カナダ間にはRRMは設けられていない。

(注2)LSOMとILAW Networkは2023年10月にも、米国がメキシコにRRMに基づく事実確認を求めた案件の申し立てを行っている(2023年10月25日記事参照)。

(注3)横浜ゴムはバージニア工場の閉鎖理由として、生産設備や生産方式が旧式で、高付加価値製品の生産を強化する目標の達成が困難だったことを挙げている。一方、今回の事実確認要請の対象となったコアウイラ州のタイヤ工場は、2024年第2四半期に着工し、2027年第1四半期に生産開始を予定している。

(滝本慎一郎)

(米国、メキシコ、日本)

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