EU、重要医薬品法案で政治合意、域内製の優遇・支援策を盛り込む
(EU)
ブリュッセル発
2026年05月29日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は5月12日、重要医薬品の確保を目的にした重要医薬品法案(2025年3月18日記事参照)について、政治合意に達したと発表した(プレスリリース
)。法案には、域内生産を優遇する措置や域内製薬産業への支援策が盛り込まれている。
今回合意された法案では、EU域内の製造能力の強化とサプライチェーンの多角化に向け、加盟国当局が重要医薬品を公共調達する際、価格以外の基準の適用を義務付ける。特に、第三国からの輸入依存度が高い重要医薬品については、複数の手段を通じて域内生産を促進できる仕組みとした。具体的には、域内での生産割合に応じて評価を段階的に引き上げる制度などが含まれる。一方で、政治専門紙「ポリティコ」によると、欧州議会が求めていた、価値ベースで50%以上を域内生産する事業者の優遇を義務付ける規定については、公的医療制度における調達価格の高騰への懸念から、EU理事会の反対により導入は見送られた。
また、域内の製造拠点の拡充を目的に、「戦略事業」制度を新設する。認定を受けた事業は、許認可手続きの迅速化に加え、加盟国による国家補助やEU予算からの支援を受けることが可能となる。こうした財政支援を受ける事業者には、域内への優先供給義務が課される。
このほか、公共調達に関連しては次の点についても合意された。加盟国が実施する重要医薬品の緊急備蓄については、他の加盟国の調達に悪影響を及ぼさないよう、備蓄要件の透明性確保などを求める。また、欧州議会が主張していた、医薬品不足時に他の加盟国の備蓄からの供給を義務的に割り当てる仕組みについては採用せず、既存の任意の連帯メカニズムの活用にとどめた。加えて、加盟国間の共同調達を可能にする協力枠組みも導入される。
さらに、今回の合意では、患者数が極めて少ない希少疾患向けの医薬品も対象に追加された。欧州議会の要請を踏まえたもので、こうした医薬品については戦略事業制度や共同調達の利用が可能となり、調達コストの低減が期待される。
法案は今後、EU理事会と欧州議会による正式な採択を経て施行される見込みだ。
(吉沼啓介)
(EU)
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