欧州委、デジタル自律性と主導権確立のため「欧州技術主権パッケージ」を提案

(EU)

調査部欧州課

2026年06月09日

欧州委員会は6月3日、半導体、人工知能(AI)、クラウド、オープンソースの分野における能力強化に向けた提案「欧州技術主権パッケージ」を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。背景には、EUが主要なデジタル製品、サービス、インフラや知的財産の80%以上を域外企業に依存しており、経済力や安全保障、また長期的な競争力の観点から、その是正が不可欠となっていることがある。

この政策パッケージは2つの立法提案を含む4つの柱で構成される。各法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

第1は「欧州半導体法2.0外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」案であり、AI時代に不可欠な半導体について、研究開発から製造までの能力をEU域内で強化する。許認可の迅速化や投資促進により供給網の強靱(きょうじん)化を図り、域外依存からの脱却を目指す。

第2は「クラウド・AI開発法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」案で、「AI大陸行動計画」(2025年4月14日記事参照)の中核をなす。最先端クラウドおよびAI技術、特に最先端AI、産業用AI、フィジカルAIの開発を支援し、データセンターの容量拡大のため、許認可の簡素・迅速化、エネルギー、土地、水、資金へのアクセスを改善し、AIやクラウドを支える十分な演算能力を確保する。

第3の「オープンソース戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、域内産のより自律性の高いソリューションを開発・提供することを目指し、クラウド、AI、インターネット技術、サイバーセキュリティーや半導体分野において、オープンソースによる代替案の拡大を図る。また、スキルへの投資、スタートアップの支援、デジタルインフラの長期的な保守とセキュリティーの向上を通じて、より強固なオープンソース・エコシステムの構築を促進する。

第4は、「エネルギー分野のデジタル化とAI活用に関する戦略ロードマップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」であり、データセンターの電力需要に対応するため、エネルギー部門とデジタル部門間の協力を促進し、データセンターを電力網に効率的に統合するとともに、必要なクリーンエネルギーの供給を確保する。また消費者がエネルギー使用を適切に管理できるよう、スマートメーターの導入拡大を支援する。

同パッケージは、既存の欧州半導体法(2023年8月2日記事参照)やAI法(2024年5月27日記事参照)などを基盤としつつ、新たな法案や戦略を組み合わせた包括的な政策である。特徴は、従来の規制中心のアプローチから、投資・インフラ整備・域内産業育成を重視する方向へと転換している点にある。EUは同パッケージを通じて、AIやデジタルにおける技術の自律性と主導権の確立を目指す。

(坂本裕司)

(EU)

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