ジェトロ、CBAM対応実務セミナー開催、在タイ日系企業向け

(タイ、EU)

バンコク発

2026年09月11日

ジェトロは9月2日、在タイ日系企業を対象に、2026年から本格適用が始まったEU CBAM(炭素国境調整メカニズム)に関するセミナーをバンコクで開催した。2027年9月を期限とする2026年分の排出量申告に向け、タイのEU向け輸出企業や関連サプライヤーにも対応が求められる中、会場とオンラインで約140人が参加した。

セミナーでは、まずグリーン・アンド・ブルー・プラネット・ソリューションズ(GBP)の梅山研一マネージングディレクターが、在タイ企業に求められる対応実務について解説した。タイ産品は、CNコード(EUの関税分類コード)によっては、EUが設定するデフォルト値(標準排出量)が日本よりも低い。一方、タイで普及するスクラップ利用の電炉(EAF)向けのCBAMベンチマーク(無償割当調整)が少ないため、CBAMコストが高くなる場合があると指摘(注1)。当面はデフォルト値が有効な手段になり得るが、将来的には実測値の活用が競争優位につながる可能性があると説明した。

また、CBAMの影響は、製品の付加価値によって異なり、低炭素の高付加価値品には商機となるが、高炭素製品では価格競争力低下や調達先変更のリスクがあるとした。そのため、報告方法の選択は、経営上の判断となっていると強調した。

続いて、西村あさひ法律事務所ブリュッセル事務所の木村響弁護士が、規則上は実測値とデフォルト値のいずれかを選択できるが、実務上はEU輸入者が輸出者に検証済みの実測値の提出を求めることが多いと指摘した。EU顧客との契約では、明確かつ実効可能な役割分担を定め、協力の意思を示すことがビジネス関係強化につながるとした。

最後に、タイ工業規格協会(TISI)のシニア・プロフェッショナル・レベルであるラッター・シーチャルーン氏が検証機関の動向について説明した。CBAM検証では、合理的保証(監査に近い高水準の検証)が求められ、初年度は現地訪問が必須となる。タイでは現在、2つの検証機関がEU加盟国の国家認定機関(NAB、2026年8月26日記事参照)への申請に向け準備しており、2027年初には認定検証機関としての認定が受けられる見込みと説明した。また、タイ政府も気候変動法案(2025年12月15日記事参照)に基づき、タイ版排出量取引制度(ETS)、CBAMの導入を進めている。同氏は、「CBAM対応をコストではなく、競争力向上の機会と捉えてほしい」と述べた(注2)。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

参加者からは、「今後、川下製品に対象が拡大(2025年12月19日記事参照)すると、自社がEU向けに輸出している製品も対象となる可能性があるため、情報収集を継続したい」といった声が寄せられた。ジェトロは、9月24日には、タイ語で同内容のセミナーを開催予定だ。

(注1)電炉(EAF)は一般に高炉と比べて、CO2排出量が少ない製造方法とされるが、CBAMの計算ルールや無償割当調整の影響により、その環境面での優位性が必ずしも十分に反映されない場合がある。

(注2)脱炭素化に向けたタイ政府・企業の取り組みは、ジェトロの「VOICE FROM THAILAND」PDFファイル(13.7MB)(2026年3月)参照。

(川嶋康子、近添優子、高橋凌太)

(タイ、EU)

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