欧州委、CBAM本格適用期間のガイダンスを公表、対象分野別文書も公開

(EU)

ブリュッセル発

2026年08月26日

欧州委員会は8月14日、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、注1)の本格適用期間における制度運用を支援するため、4本の共通ガイダンスと、6本の対象分野別(セメント、水素、肥料、鉄鋼、アルミニウム、電力)ガイダンス文書を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

4本の共通ガイダンスは、(1)CBAMの基本概念、(2)EU域外事業者が準備すべき事項、(3)体化排出量の算定方法、(4)無償割当調整について説明している。(2)は、EU域外の製造事業者向けに、実排出量の報告に必要となるモニタリング計画の策定方法を中心とし、システム境界、生産工程および生産ルートの設定方法や、排出量データの収集・管理、検証に向けた準備事項を解説している。(4)はEU排出量取引制度(EU ETS)の無償割当を踏まえ、最終的に提出すべきCBAM証書数をどのように算定するかについて初めて具体的に説明した。

対象分野別ガイダンスのうち、鉄鋼ガイダンス(5d)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、ねじ、ナットを例にした具体的な説明も含まれた。CBAMの簡素化規則では、一部のアルミニウムおよび鉄鋼製品については、EU ETSに含まれない独立した設備で実施される仕上げ工程については、EU ETSとの整合性を確保するため、CBAMの排出量算定対象範囲から除外され、そこで発生する体化排出量は算出対象外とするとしていた(注2)。鉄鋼製品のシステム境界は、「めっき、切断、溶接、仕上げの工程を除く」と定義されている。今回のガイダンスでは、購入した鋼棒からねじ、ナットを製造する工程(注3)事例を示し、事業者は施設の天然ガス消費に伴う直接排出量に加え、前駆体の体化排出量および前駆体投入係数(mi、製品1トン当たりに使用される前駆体量)を把握・報告する必要があると説明した。本格適用期間のCBAMでは、鉄鋼製品の電力消費に伴う間接排出量の報告は不要である。一方、製品の体化排出量の大部分は前駆体に由来する。また、切断・機械加工で発生するスクラップの体化排出量はゼロとして扱われるため、投入した前駆体由来の排出量は最終製品側に反映され、前駆体投入係数は1を超える値となるとしている。

また、検証機関の認定・検証に関するガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは8月24日に公表された(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委は初のCBAM認定検証機関の認定時期を2026年9月ごろとしており、検証機関登録も同月に開始される予定だ。第三国の検証機関からの認定申請を受け付けている認定機関も一部の加盟国に限られており(注4)、実排出量データの検証体制はなお整備途上にある。

(注1)CBAMの排出量算定の詳細は、調査レポート「CBAMに対する排出量の算定実務マニュアル(2026年3月)」を参照。

(注2)調査レポート「CBAMの簡素化規則の解説(2026年2月)」参照。

(注3)鋼棒を熱間圧延しさまざまな径の線材を製造する工程、線材を切断・鍛造しねじを製造する工程、線材を切断・鍛造した後、穴あけ加工や機械加工を施しナットを製造する工程。

(注4)7月時点で第三国の検証機関の申請受け入れを表明しているのは、フランス、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、スロバキア、スウェーデンの7カ国。このうち、イタリア、オランダ、ポーランド、スウェーデンは既に第三国の検証機関からの認定申請の受け付けを開始している。例えば日本などEU域外に所在する検証機関は、これらの国の認定機関を通じてCBAM検証機関としての認定を申請できる。

(薮中愛子)

(EU)

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