タイ、気候変動法案が12月2日に閣議決定

(タイ)

バンコク発

2025年12月15日

タイ政府は、国が決定する貢献(NDC)3.0に基づき、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)への貢献と、2050年までのカーボンニュートラルおよび温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロを目指している。こうした取り組みの一環として、タイ政府は2025年12月2日、気候変動法案を承認した。同法案(注1)は、国家気候変動政策委員会の設置、炭素税の徴収、カーボンクレジットの資産化などを目的としている。今後、法案は2026年前半に予定されている総選挙の実施後(注2)、下院へ提出され、2027年初頭の施行を見込む。

法案の6つの主要なポイントは次のとおり(本稿執筆時点の報道ベース)。

  1. 国家気候変動政策委員会の設立(GHG排出政策・国際的立場の策定)。
  2. 気候基金の創設(カーボンクレジットを活用し投資・適応を支援)。
  3. GHG排出データベースと削減計画の策定、企業のカーボンフットプリント(CFP)の報告義務化、違反や虚偽報告への罰則。影響を受ける可能性が高い事業分野は、GHG排出量の多い化石燃料、エネルギー、セメント、鉄鋼・アルミニウム、肥料・化学品などの産業。事業者はまず、組織および製品のカーボンフットプリント測定から着手し、早急な対応が求められる。
  4. 排出量取引制度(ETS)と国境炭素調整メカニズム(CBAM)の導入、カーボンクレジットの資産として売買や譲渡を可能化。
  5. 炭素税(注3)の定義と徴収(物品税局・関税局が担当)、関連法整備。草案では、ガソリン、ディーゼル、液化天然ガス(LNG)など30種類以上の燃料・製品に新たな国内炭素税を適用すると記載。最大課税額は、灯油1リットル当たり100バーツ(約490円、1バーツ=約4.9円)、LNG1キログラム当たり80バーツなど、ユニットに当たり12 ~ 120バーツを上限とする予定。ただし、正確な税率は未定。
  6. 産業クラスターの気候・環境影響に基づく分類基準の策定(政策・投資・グリーンファンド配分に活用)。

(注1)内閣に承認された気候変動法草案(タイ語)(タイ政府資料PDFファイル(0.0B)参照。該当箇所は29-31ページ)。

(注2)本稿執筆過程の2025年12月11日において、タイの下院会議は解散を告げ、今後の総選挙実施が予定されている。

(注3)炭素税については、2025年1月からカーボンプライシングメカニズムとして導入されている(2025年01月27日付記事参照)。

(近添優子、コーチットメート・パラミー)

(タイ)

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