米財務省、2025年CFIUS報告書を公表、安全保障上懸念ある取引に対し、より厳格な審査を要請する傾向に
(米国)
ニューヨーク発
2026年08月21日
米国財務省は8月7日、対米外国投資委員会(CFIUS)の活動に関する2025年の報告書を公表
した。安全保障に脅威をもたらし得る投資に対し、より厳格な審査を要請する傾向がみられる内容になっている。
CFIUSは、外国から米国への投資が安全保障に脅威をもたらすかどうかを審査する省庁横断の委員会だ。投資内容によっては、CFIUSへの事前申請が義務付けられているが、それ以外は任意とされる(注1)。
2025年の報告書によると、簡易的な「申告(Declaration、注2)」は140件と、2024年の116件を上回り、2022年(154件)以来の水準となった。そのうち、CFIUSが手続きの終結を通知(取引を許可)した件数は92件(2024年:91件)だった。申告された案件のうち、より詳細な審査が伴う「届け出(Notice、注3)」の提出を取引当事者に要請した件数は36件と、2024年(17件)から倍増した。このようなケースでは、当初から届け出を提出した方が審査を短期間で終わらせられた可能性がある。このため、M&A分野などに強みを持つ英国のフレッシュフィールズ法律事務所は8月19日に発表したアラート
の中で、安全保障上の懸念を引き起こすリスクがある案件については、申告ではなく届け出を提出するか検討すべきと提言している。なお、2025年の届け出の総数自体は207件と、2022年に286件を記録して以降3年連続で減少した(添付資料図参照)。
企業の国籍別では、申告に関しては、日本(18件)、フランス(14件)、シンガポール(13件)、ドイツ(12件)、韓国、英国(ともに11件)が上位だった。届け出については、中国(33件)、日本(23件)、アラブ首長国連邦(UAE、18件)、カナダ(15件)、ドイツ(14件)が上位だった。申告と届け出を合計して産業分野別でみると、「コンピュータシステム設計・関連サービス」(28件)、「ソフトウエア出版」(24件)、「科学研究開発サービス」(22件)、「半導体・電子部品製造」(21件)、「計測・制御機器製造」(17件)で多かった。
2025年に届け出が行われた取引のうち、大統領が禁止命令を出した取引は2件あった(注4)。通商政策に詳しい米国のホワイト&ケース法律事務所は8月14日に発表したアラート
の中で、これらはいずれも中国の投資家が関与した案件としている。そのうち1件は、中国企業の随鋭科技集団(Suirui Group)が株式の過半を所有する香港企業の随鋭国際(Suirui International)が米国企業のジュピター・システムズ(Jupiter Systems)を2020年2月に買収した取引とみられる(2025年7月15日記事参照、注5)。
報告書では2025年のCFIUSの運営に影響した点に、連邦政府閉鎖を挙げた。米国では2025年10~11月に史上最長の政府閉鎖が発生したほか(2025年11月14日記事参照)、2026年1月末から4月末にかけても部分閉鎖が2回発生した。これにより、CFIUSによる申告や届け出の審査が一時停止し、審査期限も後ろ倒しとなった(注6)。ホワイト&ケース法律事務所は、取引の当事者に対し、予算失効による政府閉鎖が起こり得ないか監視するとともに、仮に政府閉鎖が発生し、審査期間が長期化した場合でも取引への影響を最小化できるような契約を締結するなど、可能な範囲で対策を講じるべきと提言した。
(注1)事前申告が義務付けられている取引については、ジェトロの調査レポート「米国の経済安全保障に関する措置への実務的対応」も参照。
(注2)2018年に成立した外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)で新設した申請の種類で、申請者が投資案件の概要を原則5ページ以内にまとめて提出し、CFIUSは受理してから30日以内に審査を終え、申請者に追加の行動の要否を伝えるプロセス。
(注3)CFIUSは届け出案件について、第1段階として45日以内に審査(review)を行い、その間に安全保障上の懸念が解決しない場合は、第2段階としてさらに45日間(ただし、15日間の延長可)の調査(investigation)を行う。調査を経て脅威を認定した場合は大統領に勧告を行い、大統領はそこから15日以内に取引を阻止するか否かを判断する。
(注4)なお、バイデン前政権が2025年1月に発表した、日本製鉄によるUSスチール買収を禁止する行政命令については、政権交代後の同年4月に、ドナルド・トランプ大統領がCFIUSに再審査を指示したのち、同年6月に買収を認める大統領令を発表しており(2025年6月19日記事参照)、対象に含まれていないとみられる。
(注5)香港が地理的・経済的起源地である買収者による取引は、2020年7月に発令された大統領令に基づき、中国発の取引として報告される旨が報告書内に示されている。
(注6)報告書によると、CFIUSは申告に対する30日の審査期間、あるいは届け出に対する第1段階の45日間の審査期間までに67%を処理したとされているが、当該審査期間に予算失効期間は含まれない点に留意が必要だ。
(滝本慎一郎)
(米国)
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