ブラジル政府、米国の301条関税賦課に対しWTO協議要請

(ブラジル、米国)

サンパウロ発

2026年07月31日

ブラジル連邦政府は7月23日、米国通商代表部(USTR)が同日に発表した、1974年通商法301条に基づくブラジル産品への追加関税措置について、批判と懸念を表明した。同措置(7月24日から適用)は、ブラジルが強制労働によって生産された産品の輸入を禁止していない、または禁止に向けた効果的な措置を講じていないことを理由として、ブラジルからの輸入品に12.5%の追加関税を課すもの(2026年7月24日記事参照)。

大統領府は同日付のプレスリリースで、「ブラジルは数十年にわたり、ILOから強制労働の撲滅に向けた取り組みを高く評価されている。ブラジルは強制労働に関するILOの主要な国際文書である1930年の強制労働条約(ILO第29号条約)(注1)、1957年の強制労働廃止条約(ILO第105号条約)(注2)、2014年の強制労働(補足的な措置)勧告(第203号)(注3)および第29号条約の2014年議定書(注4)を全て批准している一方、米国の批准はこのうち1件(注5)にとどまる」として、USTRの主張を否定した。

また、ブラジル外務省は7月27日付プレスリリースで、今回の追加関税措置に加え、USTRが7月15日に発表した1974年通商法301条に基づくブラジルの特定品目への25%の追加関税措置(2026年7月21日記事参照)について、WTOに対し、協議開始を要請したと発表した。ブラジル政府は2025年8月、米国がブラジルからの輸入品に対して相互関税(10%)および追加関税(40%)措置を導入した際にも、WTOへの協議要請を行っている(2025年8月12日記事参照)。

7月28日付の現地紙「CNNブラジル」によると、米国が協議要請に応じる可能性は低く、WTO上級委員会の機能停止も相まって、今回の協議要請が実質的な成果につながる可能性は限定的とみられている(注6)。一方で、同報道は、ブラジル政府が国際貿易における多国間主義の重要性をあらためて訴える狙いもあると指摘している。

(注1)ILOが1930年6月28日に採択した、強制労働・義務労働の廃止を目的とする基本条約。正式名称は、「強制労働に関する条約」。

(注2)正式名称は、「強制労働の廃止に関する条約」。注1を補完し、特定の目的のために強制労働を利用することを明確に禁止している。

(注3)正式名称は、「強制労働(補足的な措置)勧告」。

(注4)注1を現代化するために、2014年に採択された議定書。強制労働の定義自体は、注1を維持しつつ、現代の課題である人身取引やサプライチェーン上の強制労働への対応を強化した。

(注5)この1件は、1957年の強制労働廃止条約(第105号)。

(注6)WTOルールに基づき、協議要請を受けた日から60日以内に協議によって紛争が解決しない場合、ブラジルはパネル設置を要請することが可能となる。さらに、パネルでも解決に至らなかった場合には、最終審である上級委員会による審理を求めることができる。ただし、同委員会は米国による新委員の任命拒否により、現在は機能停止状態にある(2023年8月29日付地域・分析レポート参照)。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、米国)

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