米シンクタンク、USMCAの見直しがもたらす不確実性を指摘
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年07月03日
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しが7月1日に行われ、米国が延長に合意しなかったため、3カ国は協議を継続することとなった(2026年7月2日記事参照、注1)。首都ワシントンのシンクタンクは、7月1日に合わせて論考を相次いで発表した。
戦略国際問題研究所(CSIS)のアメリカ・プログラムでフェローを務めるディエゴ・ビタール氏は6月30日に発表した論考
で、3カ国によるUSMCA延長合意までの期間が不透明であることが企業の対北米投資の負担となり、北米の競争力にとって「最大の脅威」だと主張した。リバタリアン系のシンクタンクであるケイトー研究所でバイスプレジデントを務めるスコット・リンスコム氏も、6月30日に発表したブルームバーグ向けの論考
で、見直しが数十年単位で事業計画を立てるグローバル企業に不確実性をもたらすと指摘した。
仮に見直しによってUSMCAの内容が変更される場合、議会承認が必要になるのか、という点が注目されている。この点について、CSISの経済プログラムでシニアアドバイザーを務めるウィリアム・ラインシュ氏は7月1日に発表した論考
で、政権と議会との間でまた十分に議論されていないと指摘した(注2)。議会での協議の対象となり得る内容として、貿易法改正や関税の変更を挙げ、それらが見直し後の条文に含まれるかどうかが、議会承認の必要性を左右すると解説した。また、大統領貿易促進権限(TPA、注3)が失効している中、そのまま見直し交渉の結果を議会に提出した場合、議会で内容の修正や審議の長期化などが起こり得ると指摘した。一方でリンスコム氏は、USMCAの大幅な変更には議会承認が必要となることから、見直しは承認を必要としない小幅な変更にとどまると予想した(注4)。
(注1)米国のUSMCA見直しに関する方針は、USTRのジェミソン・グリア代表が2025年12月に実施した議会報告の中で示されている(2026年2月20日付地域・分析レポート参照)。
(注2)米国憲法上、通商に関する権限は議会が有する。
(注3)議会が行政府(政権)に対し一時的に付与できる、通商に関する権限。政権がTPAを付与された状態で通商協定の交渉・合意を進めた場合、議会はその内容を修正せず、実施法案の賛否のみを審議する。米国がこれまで締結したFTA(自由貿易協定)の大半は、USMCAを含め、TPAが政権に付与された状態で発効している。ただし、TPAは2021年7月に失効している(2021年7月2日記事参照)。
(注4)見直しスケジュールにかかわらず、締約国は、他の締約国に対して書面による通知を提出することで、6カ月後に脱退できる。この点についてリンスコム氏は、上院財政委員会が2020年に発表した報告書
の中で、「米国は、議会の同意なしに、議会が承認した貿易協定から離脱することはできない」と結論付けていることや、北米3カ国の経済統合の規模などを理由に、実現は困難だという見解を示している。
(滝本慎一郎)
(米国、メキシコ、カナダ)
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