欧州産業連盟が春季経済見通し発表、中東情勢に伴うインフレ・景況感悪化を懸念

(EU、中東)

ブリュッセル発

2026年07月07日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は6月17日、「春季経済見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表し、2026年のEUの実質GDP成長率は前回予測(2025年11月17日記事参照)から0.1ポイント下方修正して1.2%とし、2027年は1.4%と予測した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

中東情勢の悪化、それに起因するエネルギー価格上昇により、EU経済の回復は再び危うい状況にある。特に強く懸念されているのがインフレの再燃だ。見通しでは、EUの2026年のインフレ率は2.8%、2027年は2.2%としたが、ホルムズ海峡の通航回復の時期によっては、さらに上昇する可能性を指摘した。

企業の景況感も半年前より悪化している。同連盟の会員団体(欧州36カ国42団体)対象の調査(4月末締め切り)では、62%が製造業について、約半数がサービス業について「事業環境が悪化」と回答した。一方、設備投資については、防衛や人工知能(AI)、インフラ分野への支出拡大を背景に、総固定資本形成は2026年に前年比2.8%増、2027年は同2.1%増と予測した。しかし、EU域内外の需要の減速、生産コストの上昇や融資条件の厳格化などが下振れリスクとなり、企業による投資の延期や規模縮小もあり得るとした。

エネルギー面では、EUの中東依存度は比較的低いものの、原油や天然ガスは国際市場で取引されるため、価格は中東危機以前より高い水準にある。航空燃料の供給不足懸念は緩和されつつあるが、ヘリウムやポリスチレン、石油化学・プラスチック製品、肥料などでは供給不安がみられ、電子機器、半導体、航空宇宙、金属や農業など多くの産業への影響が懸念される。また、航路変更に伴う輸送コストの上昇により、一部の欧州港湾では貨物取扱量が減少している。

EU加盟国は危機対応として、燃料税の引き下げ、農業・運輸など影響を受けやすい部門への支援を実施しているが、ビジネスヨーロッパは単一市場の歪曲(わいきょく)を危惧し、加盟国間の調整が必要と強調した。EUの対応では、炭素価格の安定や企業の電力コスト低減に向け、EU排出量取引制度(EU ETS、2026年5月18日記事参照)の見直しに期待を示した。無償排出枠の段階的廃止の再検討、毎年の排出削減率を示す線形減少係数(LRF)や市場安定化リザーブ(MSR)の調整が必要と訴えた。

さらに、単一市場の深化や労働者の移動関連も含め規制の簡素化、またエネルギーの安定確保に向け、(1)「エネルギー同盟」の強化、(2)越境エネルギーインフラへの投資拡大、(3)水力、再生可能エネルギーや原子力など域内エネルギー源の開発、(4)供給元の多角化に向けた自由貿易協定(FTA)の締結加速も必要と指摘した。

(滝澤祥子)

(EU、中東)

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