非友好国企業の支店・駐在員事務所などの定期預金払い戻しに上限設定

(ロシア)

調査部欧州課

2026年07月09日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月1日、非友好国(注1)への債務返済に関する制限を強化する大統領令第377号に署名した。非友好国企業のロシア支店・駐在員事務所や、ビザに基づきロシアに滞在する外国人が保有する定期預金について、ロシアの銀行が払い戻せる上限を新たに設けた。

ロシアの銀行が、非友好国の「非居住者」が所有する定期預金を払い戻す際、元本と利息の合計で月間1,000万ルーブル(約2,200万円、1ルーブル=約2.2円)が上限となる。上限を超過した分は、銀行は特別決済口座「C口座」(注2)へルーブルで振り替える義務を負う。C口座に振り替えられた資金は用途が厳しく制限され、事実上凍結された状態となる。

「1,000万ルーブル」の基準は、個々の定期預金ごとではなく、当該銀行が持つ非居住者の定期預金の総額に対して適用される。このため非居住者のほぼ全ての定期預金の払い戻しがC口座への振替対象となる恐れがある。

本措置の対象となる「非居住者」には、外国企業およびそのロシア支店・駐在員事務所のほか、主にビザに基づいてロシアに滞在する外国人が含まれる。このため、進出企業の現地拠点に加え外国人駐在員にも一定の影響が及ぶと見込まれる。一方、外国企業のロシア法人および在留許可を有する外国人は対象外である。なお、本措置はデビットカード用口座の残高や付利には適用されず、定期預金に限定される。今後、対象範囲や適用基準の見直し、制限緩和が行われる可能性がある。

在ロシア外国経済団体などによると、現時点での実務的な対応としては、銀行と相談の上、別の口座に振り替えるか、定期預金契約を延長するか、利息の受け取りを繰り延べることがリスク低減策である。定期預金契約の条件変更は法令上認められているとされる。

本措置について、法律事務所リディングスのアルチョム・ザハルチェンコ弁護士は、2026年4月に採択されたEUの第20弾制裁パッケージにおいてロシアの金融セクターへの制限が拡大され(2026年4月30日記事参照)、ロシアの銀行20行との取引が禁止されたことへの対抗措置の可能性があるとの見方を示した。AT法律事務所のタチアナ・アスタホワ上級弁護士は、非友好国の非居住者の財産権が大きく制約され、外国投資家にとってのロシア向け投資の魅力に影響を及ぼす恐れがあると指摘した(「ベドモスチ」6月16日)。

非友好国への債務返済に関する制限については2022年3月に大統領令第95号によって導入された(2022年3月9日記事参照)。今回署名された大統領令第377号によって制限対象に定期預金が新たに加わった。

(注1)欧米諸国や日本など、ロシア政府やロシアの個人、法人に対して非友好的行為を行う国・地域。連邦政府指示第430-r号(2022年3月5日付)で規定し、その後数度にわたって改定(追加)している。

(注2)非友好国からの融資・貸し付けへの返済、配当などの振り込み(月額1,000万ルーブルを超えるもの)などに利用目的を限定して使用される特別口座。

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