米シンクタンク、進行中の301条調査の影響解説、調査手法の法的妥当性など指摘
(米国、中国)
ニューヨーク発
2026年07月15日
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は7月13日、トランプ政権が現在実施している1974年通商法301条に基づく調査(注1)に関するセミナーを開催
した。米国通商代表部(USTR)は3月から、301条に基づき、60カ国・地域を対象とした、強制労働を使用して生産された産品の輸入禁止措置の実施状況を巡る調査と、16カ国・地域を対象とした、製造業における過剰生産能力や過剰生産に関連する政策や慣行を巡る調査を実施している(注2)。
セミナーでは、4人の専門家が同調査の法的プロセスや経済的影響、中国をはじめとする他国・地域との関係への影響を解説した。強制労働産品に関する調査について、CSISでシニア・アソシエイトを務めるクレア・リード氏は、301条は本来、特定国の行為を問題視して、その国との協議や行為の是正を求める制度であるにもかかわらず、今回の調査では60カ国・地域を一括で扱っているとし、その法的な妥当性が疑問視されていると解説した。特に、USTRが公開した強制労働に関する調査結果の報告書で、各国・地域における輸入禁止措置の有無や、各国・地域の慣行が米国のビジネスに与える負担などを示す証拠が十分ではないと評価した。過剰生産に関する調査については、調査対象国・地域の国内需要を上回る生産や米国に対する貿易黒字、設備稼働率が80%未満であることなどを過剰生産能力の指標としてUSTRが用いていることを挙げ、これらを「不合理な慣行」の指標として用いることは問題があると主張し、仮に訴訟となった場合に争点になり得ると指摘した。ピーターソン国際経済研究所シニアフェローのメアリー・ラブリー氏も、設備稼働率は景気循環の影響を受けるとし、その測定方法が不明確だと述べたほか、80%未満という基準が恣意(しい)的であると評価し、米国内でも多くの産業の稼働率がこの基準を下回ると指摘した。
アジア・ソサイエティ政策研究所上級副所長のウェンディ・カトラー氏は、両調査の対象外である国が約100カ国存在すると指摘し、これらの国から米国への輸入品目には一般関税率(MFN税率)が適用されるため、迂回輸出の経路になり得ると述べた。また、2つの調査を経て、これまで米国との交渉や合意を通じて設定された水準を上回る関税が課される場合、調査対象国・地域が既に締結済みの相互貿易協定の見直しを求める可能性があると考察した。
ミドルベリー国際大学院のウェイ・リャン教授は、今回の調査に対して中国は比較的冷静な反応を示していると分析した。その理由として、2つの調査において中国のみが名指しで評価されておらず、調査対象国・地域の1つとして扱われていることを挙げた。また、今回の調査理由である強制労働や過剰生産は構造的な問題であり、仮に調査結果を踏まえて関税措置が発動したとしても、抜本的な問題の解決は期待できないとの見解を示した。
(注1)301条は、外国の措置、政策、慣行が不合理または差別的で、米国の商業に負担や制限を与えるなどと調査を通じて判断された場合に、外国の製品に追加関税など輸入制限措置を講じる権限や、外国のサービスに料金や制限を課す権限などをUSTRに認めている。
(注2)強制労働産品に関する調査については、USTRは6月に調査を終了し、その結果に基づき、10%または12.5%の追加関税を課す案を発表した。また、7月にはこの関税案についての公聴会を開催した(2026年7月10日記事参照)。一方、過剰生産に関する調査については、USTRは5月に調査の一環で公聴会を開催しているが(2026年5月12日記事参照)、同調査の結果は7月14日時点で公表されていない。
(滝本慎一郎)
(米国、中国)
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