米議会中国特別委、安全保障上のリスクを懸念し、中国治験・提携巡り米大手製薬5社に調査レター送付
(米国、中国)
シカゴ発
2026年07月09日
米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委)」は6月30日、米国製薬大手の5社(アッヴィ、イーライリリー、ファイザー、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、メルク)に対し、中国における臨床試験および関連事業に関する情報開示を求める調査レターを送付し、その内容を公表した。
中国特別委は、公開情報をもとに各社の中国での臨床試験実施状況を調査しており、中国人民解放軍の医療機関や新疆ウイグル自治区で実施された試験にも言及している。その上で、中国での臨床試験実施状況、臨床データや知的財産の管理体制、中国企業との提携状況などの説明を求めている。
近年の米国製薬業界では、中国での臨床試験、中国バイオ企業からのライセンスイン、CDMO(医薬品製造受託)の活用が活発だ。一方、米国政府や議会では、中国バイオ産業との関係を安全保障上のリスクとみる動きが強まっており、中国バイオ企業との取引や医薬品サプライチェーンの海外依存を縮小する制度整備が進んでいる。
例えば、2025年12月18日に成立したバイオセキュア法は、行政管理予算局(OMB)が指定する「懸念されるバイオテクノロジー企業(BCC)」との取引を連邦調達や連邦研究資金の対象から除外する枠組みであり、BCCには米戦争省(国防総省)が公表する中国軍事企業リスト(1260Hリスト)の掲載企業のうち、バイオ事業に関与する企業などが含まれる(2025年12月24日記事参照)。
また、2026年4月2日発表の大統領布告では1962年通商拡大法232条に基づき、中国やインドを含む各国・地域からの特許医薬品および関連する医薬品原料を対象とする追加関税を導入し、米国内での生産強化を促している(2026年4月3日記事参照)。
さらに、2026年5月1日に下院歳出委員会は2027会計年度農業・米国食品医薬品局(FDA)歳出法案の委員会報告書において、中国を含む「懸念国」の治験データを、FDAが治験開始届(IND)審査で受理・審査・考慮しないよう求める方向性を示している。
今回製薬会社へ送付された調査レターでは、各社に対して中国での臨床試験やデータ管理などに関する詳細な回答が求められており、回答期限は2026年7月17日とされている。今後、各社の回答を踏まえた追加調査や立法・規制上の議論に発展する可能性がある。特に、中国で実施された臨床試験データの活用や、中国バイオ企業との提携に対する米国政府・議会の監視強化につながるかが注目される。
(坂井愛子)
(米国、中国)
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