米シンクタンク、カナダに対する338条関税を解説、301条関税対象国・地域への影響など考察
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2026年07月28日
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は7月21日、トランプ政権が7月20日に発表した(2026年7月21日記事参照、注1)、1930年関税法338条に基づくカナダへの50%の追加関税に関する解説論考を発表
した(注2)。338条は、外国の差別的措置または不平等な課税によって米国の通商に負担や不利益が生じていると大統領が判断した場合、当該国からの輸入品に最大50%の追加関税を課す権限を認めている(注3)。
トランプ政権による関税措置については、これまでも、338条を根拠に関税を課す可能性がたびたび指摘されてきた。これに関し、論考では、同条に基づく関税措置が実際に発表されたのはカナダに対してのみであることから、「トランプ政権は、貿易相手国が米国に対して報復措置を講じている場合にのみ、338条(に基づく関税)を使う意図を有するのではないか」と考察した。実際に米政府高官は今回の措置の背景として、カナダが米国による貿易措置に対し報復措置を維持してきたことを挙げている(米通商専門誌「インサイドUSトレード」7月20日)。また、USTRが1974年通商法301条に基づき、(1)強制労働産品の輸入禁止措置、および(2)製造業における過剰生産能力や過剰生産に関連する政策や慣行に関する、2つの調査を実施していることにも言及した(論考発表時点、注4)。そして、これらの調査結果に基づき関税などの輸入制限措置が発動された場合、相手国・地域が報復措置を発動しないよう警告する役割を果たすとの見解を示した。
また、カナダに対する追加関税措置を、現在進行中の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直し協議を見据えたものだと指摘した。その理由として、これまでトランプ政権が、関税措置を発動する際にUSMCAの原産地規則に準拠した産品を対象外としてきたにもかかわらず、今回の措置には、そのような例外規定が存在しない点を挙げた。その上でトランプ政権の目的を、(1)交渉における優位性を築くこと、(2)カナダをUSMCAの見直し協議に参加させること、(3)カナダ政府に対し、米国の要求を受け入れるよう圧力をかけること、の3点だと分析した。
論考は、今回の措置の法的妥当性についても取り上げた。338条は、米国国際貿易委員会(USITC)が米国製品に対する不公正な貿易待遇を監視するとともに、その結果と勧告を大統領に報告する責任を負うことを定めている。しかし、ホワイトハウスが発表した大統領布告には、このような手続きが行われたかどうかが明記されておらず、この点が、訴訟が起きた場合の焦点の1つになると指摘した。他方で、これまでに338条に基づく関税措置の法的妥当性が裁判所で判断されたことがないことや、裁判所が、関税については行政府(政権)の判断を尊重する傾向にあることも補足した。
(注1)追加関税の対象は、米国東部時間8月19日午前0時1分以降に輸入通関される製品。
(注2)論考は、経済プログラム・国際ビジネス・ショール講座フェローのクリストファー・ギュンダーマン氏とヒュー・グラント・チャップマン氏、米州プログラム・フェローのディエゴ・ビタール氏が執筆したもの。
(注3)議会調査局(CSR)によると、338条は、関税を課すための前提条件として、1974年通商法301条や1962年通商拡大法232条と異なり、行政機関による調査や決定を要求していない。
(注4)強制労働産品に関する調査については、USTRが7月23日、調査結果を踏まえ、60カ国・地域を対象に10%または12.5%の関税を賦課することを発表した(2026年7月24日記事参照)。過剰生産に関する調査は、現在も進行中となっている(7月23日時点、2026年5月12日記事参照)。
(滝本慎一郎)
(米国、カナダ、メキシコ)
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