アルゼンチンが米国主導の「パックス・シリカ」宣言に署名

(アルゼンチン、米国)

ブエノスアイレス発

2026年06月30日

アルゼンチンは6月26日、米国主導で友好国間で半導体や人工知能(AI)に関するサプライチェーンの強靭(きょうじん)化を目指す「パックス・シリカ」に正式参加した。在米国アルゼンチン大使館の公式X(旧Twitter)で、アレハンドロ・オクセンフォード駐米大使が首都ワシントンで「26日朝にパックス・シリカ宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した」と明らかにした。

リチウムや銅など鉱業分野への投資促す狙いも

オクセンフォード駐米大使は、公式Xに掲載した声明で「これは単なる外交上の節目にとどまらず、規制緩和、イノベーション、民間投資(の拡大)に基づきハビエル・ミレイ大統領が進めている大変革を反映したものだ」とパックス・シリカ参加への意義を説明。その上で、「アルゼンチンは重要鉱物とエネルギー資源に加え、RIGI(注1)を含む新たな法的枠組みを備えており、信頼できるパートナーとなる条件を有した国だ」と自信を見せた。

パブロ・キルノ外相もこれに先立つ6月24日に自身のXで、アルゼンチンがパックス・シリカに正式参加予定であることを明らかにするとともに、「この参加によってアルゼンチンは、AIの発展に必要な重要鉱物および戦略的資源の供給国として信頼できる地位を確立する」と表明。また、2026年2月に米国との間で署名された「重要鉱物の採掘および加工における供給確保のための枠組み文書」(注2)について触れ、パックス・シリカへの参加は「同枠組みを継続・補完するもので、アルゼンチンと米国の戦略的関係を一層強化するものだ」と投稿した。

アルゼンチンは、リチウムの埋蔵量で世界第4位(注3)。AI向けデータセンターの増加などで需要が急増している銅については、埋蔵量こそ世界10位前後だが、世界では老朽化に伴い品位(注4)が低下していく銅鉱山が増える中、アルゼンチンではこれから開発が始まる段階だ。また、電力源となるシェールガスの技術的回収可能量も世界第2位(注5)で、パックス・シリカが想定する分野でサプライチェーンを強靭化するにあたって、重要な原料提供国となり得る潜在力を持つ。政府はこれら分野への内外からの投資を促進しており、これに先立つ6月23日には、30年以上も手付かずだった鉱業投資法を改正し、近代化している(2026年6月24日記事参照)。政府はパックス・シリカへの参加をテコに、鉱業分野へのさらなる投資を促したい考えとみられる。

パックス・シリカ・サミットで参加国が拡大

6月25、26日にワシントンで第2回パックス・シリカ・サミット(注6)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが開催され、それにあわせてアルゼンチンのほか、チリ、ドイツ、オランダなど9カ国に加えEUが宣言に署名し、新たにメンバーに加わった。米国国務省によると、日本、韓国、英国など発足当初からの国も合わせ、正式参加国(宣言署名国)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは23カ国およびEUとなった(注7)。

(注1)大型投資奨励制度。政府が定める8つの対象分野で2億ドル以上の新規投資を行った案件に対し、法人税や輸出入税の減免、資本取引規制の例外措置などの恩典が30年間保証で与えられる。

(注2)リチウムや銅など戦略的に重要な鉱物のサプライチェーン強靭化を目指す合意文書。米国はアルゼンチン以外にも、日本、チリなどと同種の文書を取り交わしている。

(注3)米国地質調査所(USGC)2026年レポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注4)鉱石に占める銅の含有率のこと。

(注5)米国エネルギー情報局(EIA)レポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注6)パックス・シリカは、2025年12月に米国が立ち上げた枠組み。AIの進化で重要鉱物や関連インフラへの需要が増加し、サプライチェーン再編が進むとの認識の下、敵対国への依存軽減や新技術の確保といった領域で友好国と連携することを目指すものだ(2026年3月31日記事参照)。

(注7)台湾は、パックス・シリカ宣言および米台経済安全保障協力に関する共同声明を通じて、パックス・シリカ宣言の原則を支持したというかたちで参加。

(峯村直志)

(アルゼンチン、米国)

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