トランプ米政権、全ての輸入者にIEEPA関税還付を命じた判決に控訴

(米国)

ニューヨーク発

2026年06月04日

米国のトランプ政権は6月2日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の還付を命じた国際貿易裁判所(CIT)の判決に対して、連邦巡回区控訴裁判所に控訴した。いまだ還付手続きの対象となっていない、清算済みの輸入申告の還付を念頭に置いているとみられる。

連邦最高裁判所が2026年2月にIEEPA関税を無効と判断した後、CITは3月に米国税関・国境警備局(CBP)に対してIEEPAに基づいて徴収した関税を還付するよう命じた。CITはその際、訴訟していない企業も含め、IEEPA関税を原則全ての輸入者に還付するよう指示した(2026年3月5日記事参照)。これを受けCBPは、IEEPA関税を還付する「統合通関管理・処理システム(CAPE)」を構築し、4月20日から、まずは「関税が未清算または清算後80日までの輸入申告」を対象にした「フェーズ1」の運用を開始した。CBPはこれまでに3度、CITに対して還付に関する進捗報告を行い、5月22日時点で約850億ドル分の還付が認められている(2026年5月28日記事参照)。

トランプ政権は今回、裁判所による救済措置は原則、訴訟を起こした原告に限定されるとした最高裁の過去の判例を引き合いに(注1)、全ての輸入者への還付を指示する命令はCITの権限を超えており違法として、連邦控訴裁に控訴した(注2)。3月にCITによる還付命令が出された直後から、「CITが広範な救済を命じる権限があるか」という点が論点になることが政治専門紙で指摘されていた。

一方で、トランプ政権は、具体的にどのような手続きでIEEPA関税を還付すべきかについては明示していない。さらに、既に還付されたIEEPA関税の取り扱いについても現時点では不明だ。CITは5月27日、CBPに対して、現時点で対象外の輸入申告に対する還付手続きの進捗状況を6月4日までに書面で、6月9日にロドニー・スコット局長が出廷して報告するよう命じた(注3)。これに対し、トランプ政権は5月29日に、「再清算を義務付ける輸入業者ごとの命令を通じて処理されなければならない」と書面で返答していた。こうした点から、米通商専門誌インサイドUSトレード(6月2日)は、これから手続きが始まる清算済みの輸入申告においては、還付を受けるために訴訟が必要になる可能性を指摘している。

(注1)通称、「Trump v. CASA, Inc.」事件PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。最高裁は、命令は原告を救済するために必要な範囲に限定されるべきであり、全米レベルの政策を無効化するような広範な命令には正当性がないと結論付けた。

(注2)トランプ政権は、IEEPAに基づく追加関税が無効との最高裁の判決自体は争っていない。提訴していない企業も含めた、IEEPA関税を支払った全ての輸入者へ還付する「包括的差し止め命令」が違法だとして争っている。

(注3)トランプ政権は、スコット局長による報告にも反対している。

(赤平大寿)

(米国)

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