米国際貿易裁判所が税関に未精算のIEEPA関税の還付を命じる、トランプ政権は控訴の可能性

(米国)

ニューヨーク発

2026年03月05日

米国の国際貿易裁判所(CIT)のリチャード・イートン判事は3月4日、米国税関・国境警備局(CBP)に対して、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の還付を事実上、命じた。ただし、最終清算が済んでいる場合の指示がないことや、トランプ政権が控訴する可能性があることなどから、引き続き状況を注視する必要がある。

米国では、輸入者が輸入時に納入する関税は推定関税(Estimate Duty)となっており、CBPはその後、通常314日以内に確定関税を通知する。ここで推定関税と差異があれば、この差額分が徴収もしくは還付される。これを関税清算(Liquidation)という。また、輸入者などは関税清算後でも、180日以内であればCBPに対して異議申し立てを行うことができ、これが認められれば、再精算(Reliquidation)となる(注)。全ての精算が終了することで、最終確定(Final Liquidation)となる。

今回CITは、この両方の精算過程において「IEEPA関税を考慮しない」ようCBPに命じたため、IEEPA関税分が輸入者へ還付されることになる。連邦最高裁判所は2月20日、IEEPAに基づいて大統領が関税を課すことは認められないとの判決を下したが、関税の還付について触れていなかったため、輸入者が既に支払った関税の還付が焦点の1つになっていた(2026年3月4日記事参照)。

なお、今回の命令は、IEEPA関税の還付を求めた特定企業1社の訴訟に対するものだが、IEEPA関税の対象となった輸入者全てに適用されるとした。またイートン判事は、マーク・バーネット首席判事が還付に関する全訴訟の単独審理権限を自身に付与したため、他の訴訟においても今回と異なる結論に達することはないとした。

IEEPAに基づく最初の関税措置は、2025年2月に合成麻薬フェンタニルなどの流入を阻止する目的で賦課された中国に対する関税だ(2025年2月4日記事参照)。また、原則として全ての国・地域からの全ての輸入に関税を課す相互関税は、同年4月から始まった(2025年4月3日記事参照)。従って、2025年2月に対中フェンタニル関税の推定関税を支払った輸入者は同年12月に、同年4月に相互関税を支払った輸入者は2026年2月に清算の時期が来ることになるため、これまで支払ったフェンタニル関税や相互関税の大部分は還付の対象になるとみられる。

ただし、今回の命令でIEEPA関税の還付手続きが全て整ったわけではない点には留意が必要だ。米通商専門誌「インサイドUSトレード」(3月4日)は、今回の命令について、最終清算済みの場合の指示がないこと、利息について言及がないこと、の2点を「未解決の疑問」とするベイカー・ホステラー法律事務所のマシュー・カリガー氏のコメントを紹介している。関税の還付では、一般的に利息を含めるという。また、政治専門紙「ポリティコ」(3月4日)は、シドリー・オースティン法律事務所のテッド・マーフィー氏による「CITがこのような広範な救済を命じる権限があるかどうか」が論点になるとの指摘と、トランプ政権は「ほぼ確実に上訴する」との見方を紹介している。

(注)異議申し立てには、通常CBPフォーム19PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が利用される。詳細はCBPのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(赤平大寿)

(米国)

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