欧州委、化学物質評価の動物実験の段階的廃止に係る行程表を発表、AI活用などを重視
(EU)
ブリュッセル発
2026年06月09日
欧州委員会は6月1日、EUの化学物質規制であるREACH規則の強化と2025年7月に発表した化学産業行動計画(2025年7月17日記事参照)の具体策として、化学物質の安全性評価における動物実験の段階的廃止に向けた行程表
を発表した(プレスリリース
)。「代替手法の普及」「研究開発の強化」「EU域内外での連携促進」の3本柱の下、22の取り組みを示し、進捗状況を確認するハイレベル会議を2029年までに開催するとした。
行程表では、動物実験に代わりコンピュータのアルゴリズムや数値解析を活用することなど、30以上の提言を示した。また、規制の予見可能性を高め、リスクがより少ないイノベーション創出につなげるため、企業と規制当局との間で機密情報を保護しつつ、代替手法の受容可能性に係る意見交換や関係者間での知見共有を促進させる。
EUは20年にわたり約15億ユーロの研究開発支援を行い、多くの中小企業も含め、研究志向型の企業から革新的な研究所まで、世界的に先行する産業基盤を構築してきた。代替手法の市場は引き続き急速な成長が見込まれ、行程表はライフサイエンス戦略(2025年7月10日記事参照)やスタートアップ・スケールアップ支援戦略(2026年6月4日記事参照)などイノベーション推進支援に係る戦略と相互に連携し、EUの競争力強化に資することも期待される。特に人工知能(AI)の活用を重視し、AI活用戦略と科学分野でのAI戦略(2025年10月24日記事参照)との相乗効果により、AIを代替手法として活用するほか、エビデンスの統合や共同研究の促進など、多岐にわたる分野での応用を目指す。また、「欧州医療データ空間」(2024年3月26日記事参照)に蓄積される医療関連データの2次利用など、ビッグデータの活用にも重点を置いた。
行程表について、欧州製薬団体連合会(EFPIA)
は同日、「高い倫理観と科学的根拠に基づくイノベーション推進に向けた重要な前進」と歓迎した。欧州化学工業連盟(Cefic)
も6月2日、研究者・政策担当者・企業の協働の成果であり、共通の目標に向かって連携すれば意義のある成果が出ると歓迎した。その上で、高い安全性・環境基準を保持しつつ、欧州化学産業の持続性、革新性と競争力を維持するためにも、行程表の実施に必要な財源確保と、ガバナンス体制や調整メカニズムの構築を要請した。
(滝澤祥子)
(EU)
ビジネス短信 8d8231297b9ded2a





閉じる