2025年の実質賃金が4.0%増、インフレ率低下で前年上回る
(シンガポール)
シンガポール発
2026年06月04日
シンガポール人材省(MOM)が5月28日に発表した「2025年賃金慣行レポート」によると、フルタイムで働く国民(永住権者を含む)の名目総賃金の平均上昇率は2025年に前年比4.9%で、2024年の5.6%を下回った。しかし、インフレ率の低下により、消費者物価指数(0.9%上昇)を加味した実質総賃金の上昇率は4.0%となり、2024年(3.2%)を上回った。
MOMによると、2025年はGDP成長率が5.0%と引き続き堅調だったことから、企業を取り巻く経営環境も良好だった。2025年に利益が横ばい、または改善したと報告した企業の割合は64.1%と、2024年(62.7%)を上回った。また、2025年に賃上げをした企業の割合は72.4%に上ったが、2024年(78.3%)を下回った。賃上げの理由として、「従業員の定着・確保」が最も多く挙げられた。
産業別では、賃金上昇率が最も高かったのは事務・サポートサービスで前年比7.5%だった。MOMは同分野の賃金上昇について、「累進的賃金モデル(PWM、注1)」と「現地適格月給(LQS、注2)」の運用が寄与したと説明した。また、保険サービス(6.6%)、金融サービス(5.9%)の上昇率も高かった。これについては、投資アドバイザーや金融アナリストなど高度人材の需要が引き続き高かったことが背景にあるとしている。一方、宿泊と飲食サービスはともに3.9%と賃金上昇率が最も低く、建設も4.0%にとどまった。
MOMは今後の見通しについて、「賃金の伸びが続くが、国際情勢を巡る不確実性の高まりやインフレ圧力を背景に、上昇ペースが軟化する」可能性を指摘した。また、企業が賃上げにより慎重になるとみている。シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は、2026年にはインフレ率が上昇すると見込んでいる。同庁の予測では、2026年通年の消費者物価指数(CPI)上昇率とコアインフレ率(注3)は「1.5~2.5%」に上昇する見通しだ(2026年4月15日記事参照)。
(注1)PWMは、低賃金労働者の賃金底上げのため、職種と技能に応じて賃金を段階的に引き上げる制度。事務・サポートサービスと運転手については2023年3月から導入が開始。詳細はMOMのサイト
を参照。
(注2)LQSは、外国人を雇用する雇用主に義務付けているフルタイム国民(永住権者を含む)の給与基準(2026年2月18日記事参照)。
(注3)コアインフレ率は、総合消費者物価指数から住宅関連費と自家用道路交通関連費を除いたもの。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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