米商務省、先端コンピューティング関連製品の輸出許可要件に関するガイダンス発表
(米国、中国)
ニューヨーク発
2026年06月03日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は5月31日、特定の先端コンピューティング関連製品を中国などに本社を置く企業に対し輸出などする際、許可取得が必要となることを明確化するガイダンス
を発表した。
BISは、バイデン前政権下の2023年11月から、輸出管理規則(EAR)上の国別グループ「D:5」に指定された国(注1)またはマカオに本社(または最終的親会社)がある企業に対し、特定の先端コンピューティング関連製品を輸出などする際には許可取得を求める暫定最終規則(IFR)を施行している(2023年10月18日記事参照)。さらに、バイデン前政権終了間際の2025年1月、先端人工知能(AI)の開発などに使われる先端コンピューティング集積回路(IC)を新たに輸出許可の取得対象とする、いわゆるAI拡散ルールを発表した(2025年1月14日記事参照)。しかし、トランプ政権発足後の2025年5月、AI拡散ルールは「米国のイノベーションを阻害し、企業に過度の規制負担を課す」として、執行しない方針を発表した(2025年5月15日記事参照)。
こうした経緯を背景に、BISに対して、2023年11月から施行した「D:5」またはマカオに親会社がある企業向けの輸出規制は現時点でも有効か、との質問が相次いでいた。今回のガイダンスでは、当該要件はAI拡散ルールよりも前に制定されたものであるとし、現在も有効(すなわち、輸出許可が必要)だと明確にした。
米通商専門誌「インサイドUSトレード」(6月2日)は、今回のガイダンス発表に関する有識者のコメントを紹介している。外交問題評議会(CFR)で中国・新興技術担当シニアフェローを務めるクリス・マグワイア氏は、BISが今回のガイダンスを発表せざるを得なかった理由に、中国企業がエヌビディアの「ブラックウェル」(注2)を合法的かつ輸出許可なしで購入できていたため、と指摘した。バイデン前政権下の商務省で重要・新興技術顧問を務めていたサイフ・カーン氏によれば、規制上の混乱により、輸出許可なしに、中国に本社を置く企業へ最先端の米国製AI半導体の大規模な出荷が再開されていることは、「公然の秘密」だったという。なお、両氏は共に、今回のガイダンスが、ファウンドリーに対し顧客デューディリジェンス要件の適用を明記していない点を問題視している。カーン氏は、「華為技術(ファーウェイ)が再びダミー企業を利用して、米国や同盟国のファウンドリーで数百万個の半導体を違法に製造する事態を招く可能性を残してしまった」と指摘した。
トランプ政権は、AI拡散ルールを撤回すると表明して以降、これに代わる新たなルールを発表していない。AI拡散ルールの撤回意向が示された直後の2025年6月、首都ワシントンの専門家は、米国が強力な輸出管理規則を導入すれば中国は重要鉱物などに対する輸出管理の強化といった対抗措置を行うと考えられることから、米国は「新たな輸出管理規制を発表すると述べるだけしかできないのではないか」と指摘していた(注3)。
(注1)国務省が武器輸出禁止措置の対象に指定した国。中国などが含まれる。
(注2)エヌビディアの最新のAI向け半導体「ルービン」の1つ前の世代に当たる半導体。
(注3)ジェトロによるインタビュー。
(赤平大寿)
(米国、中国)
ビジネス短信 4e6356036e6ae77a





閉じる