トランプ米政権、グリーンカード申請手続きを厳格化する方針
(米国)
ニューヨーク発
2026年06月09日
米国市民権・移民局(USCIS)は5月22日、永住権(グリーンカード、注1)の申請は、米国外から国務省を通じた領事手続きを経る必要があるとの政策覚書
を職員向けに発出
した。USCISは、移民法を解釈し直した結果だと説明している。米シンクタンクのピュー・リサーチ・センターによると、2024年に米国が新規に発給したグリーンカード136万件のうち、58%が米国内からの申請だったため、仮に厳格に運用されれば影響は大きくなる。
本覚書は、米国内で行われる在留資格変更(AOS)申請(注2)の承認基準を厳格化する方針を示したものだが、その手続き自体を禁止するものではない。また、USCISは本方針の発表後、経済的利益をもたらす、あるいは国益に貢献する申請者については、申請のために出国を求められる可能性は低いとの説明を追加した。今回の政策方針の発表が与える影響の緩和を狙ったとみられる。
一方で、ビザの滞在期限を過ぎている者や非移民、または仮放免(パロール、注3)のステータスで米国に滞在している者には、影響する可能性がある。USCISは、米国内からの申請を許可するか否かを判断する際には、家族関係、移民ステータスおよびその履歴、さらには道徳的人格を含む全ての関連証拠を考慮しなければならないとし、米国内での申請を認めることは「極めて例外的な裁量的救済」および「行政上の恩恵」と位置付けられるべきだとしている。これらの判断は、移民担当官の裁量に基づき、ケース・バイ・ケースで実施される。なお、申請を却下する場合、担当官は却下理由を詳細に記載した通知を発行しなければならない。
グリーンカードの審査完了までには、数カ月、場合によっては数年を要することがある。そのため、母国に帰って申請する場合、申請者がいつ再入国を許可されるか不透明な状況となる。「ニューヨーク・タイムズ」紙(5月29日)は、家族のスポンサーシップを通じた申請者への影響が最も大きくなると指摘している。同紙によれば、一時滞在ビザで入国し米国市民と結婚した後、厳密にはビザの滞在期限を過ぎているにもかかわらず、グリーンカードの申請中に米国に滞在することが認められてきた。そのため、仮に米国外からの申請を余儀なくされれば、ビザの滞在期限超過により、再入国を認められない可能性が高いという。なお、米国移民評議会(5月27日)は、今回の申請厳格化は、根拠とする法律の解釈や具体的な実施方法の不明確さから、法的な異議申し立てに直面する可能性が高いとしている。
今回の発表は、移民政策を強化するトランプ政権のこれまでの方針と一致している。トランプ政権は2025年9月、高度技能人材向けのH-1Bビザ(2025年4月10日記事参照、注4)のスポンサーとなる雇用主に対して10万ドルの申請手数料を課し、同ビザの抽選制度についても、より高い賃金水準の労働者が優先される仕組みに変更したほか、同年12月には国家安全保障と公共の安全確保を理由に39カ国の外国人の入国を制限した(2025年12月19日記事参照)。2026年1月には、国務省が福祉制度の不正利用への懸念を理由に、75カ国に対するビザの発給を一時停止
した。
(注1)グリーンカードは、米国に永住し、就労する権利を与えるもの。
(注2)在留資格の変更(Adjustment of Status)は、家族、就労、人道上の理由に基づき在留資格を持つ移民がグリーンカードの申請を行うための手続き。米国内にいる申請者が永住権を取得するための主な手段。
(注3)仮放免(Parole)とは、人道的または公益上の理由により、ビザなしで米国に一時的に滞在することを許可される在留資格のこと。
(注4)H-1Bビザは、雇用主が専門職の熟練労働者を米国に招聘(しょうへい)できるよう支援する非移民ビザ。
(大垣ジャスミン)
(米国)
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