トランプ米大統領、国家量子戦略の更新などを定めた大統領令を発表
(米国)
ニューヨーク発
2026年06月24日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月22日、量子技術における米国のイノベーションを促進するとともに、国家安全保障を強化するための大統領令を発表
した。同日発表したファクトシート
では、「量子技術を利用して米国の経済および国家安全保障を損なおうとする敵対国」がいるなどと危機感を示した。
大統領令では、「量子情報科学技術(QIST)は、米国のイノベーションを推進し、経済成長を牽引するとともに、高賃金の雇用を創出し、国家安全保障を強化する変革的な能力をもたらす」とした上で、米国がQISTにおいて技術的優位性を維持し、研究、製造、商用化、応用において量子エコシステムを主導するための措置をとるよう関係閣僚に指示した。主な内容は次のとおり。
- 国家量子戦略の更新:本大統領令の発令から180日以内に、科学技術担当大統領補佐官(APST)は、国家量子戦略に、QISTの商用化の促進、量子基盤技術エコシステムの支援、米国産業界とのパートナーシップの促進といった内容を含むよう更新する(注1)。
- 科学応用に向けた量子コンピューティングの活用:APST主導の下、科学的発見を目的とした量子コンピュータの開発を追求する「応用開発および発見科学のための量子コンピュータ(QC-ADDS)」イニシアチブを設立する。同イニシアチブの下、少なくとも当該規格を満たすコンピュータ1台をエネルギー省の施設に設置する。
- 量子サプライチェーンの米国内エコシステムの強化:商務長官は、民間部門によるQIST関連規格の採用促進、QIST関連製品の製造上の課題解消につながる研究開発の支援などにより、エコシステムを強化するための計画を策定する。
- 量子分野の人材拡充および確保:本大統領令から90日以内に、人事管理局(OPM)局長は、政府全体にわたるQIST人材の採用・定着戦略を策定する。
- 国際パートナーとの連携:国務長官および商務長官は、同盟国などと協力して、米国の量子関連企業による海外市場へのアクセス確保、投資規制の調和を通じた国際エコシステムの維持、輸出管理政策の調和を通じた懸念国による関連技術の取得防止などを行う。また商務長官は、米国のQIST企業の競争力を制限する外国の貿易障壁、差別的待遇などへの対処方法を提言する。国務長官は、本大統領令から120日以内に、「パックス・シリカ」(注2)を含む各国との協力枠組みと、本大統領令の方針をどう整合させるかについて提言する。
なおトランプ氏は同日、量子コンピュータが稼働すればサイバーセキュリティーのリスクも高まるとして、国家の機密データ、重要インフラ、デジタル経済に対する暗号保護を強化するための措置を指示した大統領令
も発表した。ファクトシート
も併せて発表している。
トランプ政権は量子分野の政策を強化しており、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づき、5月には量子コンピューティングに関係する米国内企業9社に対し総額20億1,300万ドルを、6月には人工知能(AI)や量子暗号技術によるソリューションを扱うスタートアップのサンドボックスAQに5億ドルを助成すると発表している(2026年6月19日記事参照)。
(注1)米国ではトランプ政権1期目の2018年に、量子分野における初めての国家戦略
が策定されるとともに、「国家量子イニシアチブ法」が成立した(2026年3月13日付地域・分析レポート参照)。
(注2)パックス・シリカ
は2025年12月に米国が立ち上げた、同盟・パートナー国の経済安全保障上の連携のための枠組み。AIの進化によって重要鉱物や関連インフラなどの需要が増加し、サプライチェーン再編が進むとの認識の下、敵対国への依存軽減や新技術の確保、機密度の高い技術の保護といった領域での連携を目標としている。国務省は、パックスシリカサミットを6月25~26日に開催
すると発表している。
(赤平大寿)
(米国)
ビジネス短信 2263b0d4f1d97951





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