米連邦地裁、トランプ政権のH-1Bビザ手数料10万ドルを無効と判断

(米国)

ニューヨーク発

2026年06月11日

米国マサチューセッツ州連邦地方裁判所は6月8日、トランプ政権が導入したH-1Bビザの新規申請に対し、雇用主に10万ドルの手数料を課す措置について無効とする判断PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を下した。同裁判所は、この手数料は実質的に税に当たることから議会の承認を必要とするため、大統領の権限を逸脱していると指摘した。手数料は2025年9月に導入され、H-1Bビザへの依存度が高いIT業界を中心に大きな波紋を呼んでいた。

訴訟は、民主党系の20州からなる連合が提起したもので、同連合は、手数料が教師や大学教員の採用を阻害していると主張していた。トランプ政権は控訴する意向を示しており、その間、判決の執行が停止される可能性がある。その場合でも、手数料の徴収は継続される見通しだ。

なお、本件を巡っては複数の訴訟が並行している。米国商工会議所の異議申し立てに関する訴訟では、2025年12月にコロンビア特別区連邦地方裁判所が手数料を適法と判断しており、現在は控訴審で審議が続いている。また、医療従事者団体による訴訟も、カリフォルニア州連邦地方裁判所で係争中だ。各地裁で判断が分かれていることを踏まえれば、本件は最終的に連邦最高裁判所に持ち込まれる可能性がある。

H-1Bビザは、雇用主が当該職務に適格な米国人労働者を確保できない場合に、外国人を専門職の熟練労働者として招聘(しょうへい)できるようにする非移民ビザだ。年間発給枠は6万5,000件で、米国の大学院で学位を取得した者には別途2万件が割り当てられている。H-1Bビザ保持者は、国籍別ではインドや中国の出身者が多く、産業別ではテクノロジーや金融に集中している(注1、2025年4月10日記事参照)。コーネル大学の分析(1月27日)によれば、本措置導入前の申請手数料は、平均で1,000~5,000ドルだった。

また、H-1Bビザ制度については、米国人労働者への影響を懸念する一部の共和党議員から批判が出ている(2024年12月24日記事参照)。チップ・ロイ下院議員(共和党、テキサス州)は6月4日、H-1Bビザを永住権(グリーンカード、注2)取得への経路として利用することを制限するとともに、外国人留学生が卒業後に与えられる一時的な就労制度の廃止などを盛り込んだ法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出した。ただし、同法案は超党派の支持を得ておらず、成立の可能性は低いとみられる。

さらに、H1-Bビザを巡っては、労働省が2025年9月に開始した取り締まり強化策の下で、不正利用の疑いに関する調査を約200件実施し、2026年5月4日時点で4社の雇用主をスポンサー資格から除外した。また、同省は3月27日、外国人労働者の低賃金雇用を抑制し、米国人労働者の競争力を強化するため、H-1Bビザ保持者の最低賃金引き上げに関する規則案を提示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2020年10月14日記事参照)。

(注1)米シンクタンクのピュー・リサーチ・センターによると、2023年のH-1Bビザ承認件数の73%をインド人が占め、次いで中国人が12%を占めている。

(注2)グリーンカードは、米国に永住し、就労する権利を与えるもの。

(大垣ジャスミン)

(米国)

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