米政府、H-1B外国人就労ビザの発給要件を厳格化へ

(米国)

ニューヨーク発

2020年10月14日

米国土安全保障省(DHS)は10月8日、米国市民の雇用確保を掲げるトランプ政権の政策の一環として、外国人に発給するH-1B就労ビザの要件を厳格化する最終暫定規則(Interim Final Rule)を官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表した。2020年12月7日から有効となる。

DHSが事前に発表したプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、H-1Bビザはもともと米国企業が世界経済の中で競争力の高い存在であり続けるために、足りない雇用を埋めることを目的としていたが、現在では本来の目的を超えて利用されているとした。さらに、50万人以上のH-1Bビザ保持者が米国市民の職を奪ったとし、新型コロナウイルスにより経済が低迷している今こそ、H-1Bビザ制度を厳格化することが重要だとした。

厳格化の内容は主に3点あり、(1)広く解釈される余地のある「専門分野職(specialty occupation)」の定義を狭めることにより、企業に制度の抜け道を悪用させない、(2)企業に実際の採用通知を実際の従業員に与えることを義務化する、(3)H-1Bビザの認定前から認定後にかけて、DHSによる職場の検査とコンプライアンスの執行を強化するとしている。これにより、安価で代用できるからという理由で、適正のある米国人の代わりにH-1Bビザの外国人労働者を利用することに対抗するとした。

チャド・ウルフ国土安全保障長官代行は「経済の安全保障が国土安全保障にとっても不可欠な時代に突入した。もはや、経済の安全保障は国土安全保障だ」と述べた。官報によると、今回の最終暫定規則は有効となる12月7日以降の申請のみに適用となり、現在申請中または既に承認済みの案件には適用しないとしている。

労働省も10月8日、H-1Bビザを含む非移民労働ビザ保持者の賃金算出方法の見直しをした結果、既存のものでは悪用される可能性が高いことが判明したとし、最終暫定規則を官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表した。こちらは即日有効とした。

労働省が事前に発表したプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、雇用主が外国人労働者に支払う賃金を同等の役職の米国人労働者の賃金と同等またはそれ以上(注1)に改善することにより、米国人労働者よりも賃金の低い外国人労働者を優先して雇えるという労働市場の不公平さを防ぐとした。ユージン・スカリア労働長官は「ビザ制度の乱用に対処し、賃金保護を強化することは、外国人の就労制度を向上させ、米国人労働者が安定した良い賃金の職に就く機会を確保することにつながる」とした。

DHSと労働省のいずれの最終暫定規則についても、11月9日までパブリックコメントを募集するとしている(注2)。

(注1)労働省の発表に基づくと、同等の経験や資格を基に同等の役職に市場で一般的に支払われている賃金、または、同条件で雇った米国人に実際に支払っている賃金のいずれか高額の賃金。

(注2)DHSに対しては連邦政府のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのドケット番号USCIS-2020-0018から提出可能。労働省に対しては同じサイトのドケット番号ETA-2020-0006から提出可能。

(吉田奈津絵)

(米国)

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