ポーランド、EU防衛投資融資制度「SAFE」に基づく協定に署名、最大437億ユーロ調達へ

(ポーランド、EU、米国、韓国)

ワルシャワ発

2026年05月14日

「欧州の安全保障行動(SAFE、2025年9月16日記事参照)」に基づく融資協定が5月8日、ポーランドの国防相、財務・経済相、および欧州委員の間で署名され、ポーランドは最大437億ユーロの低利融資を受ける見通しとなった。ポーランドはSAFEに参加する19カ国の中で最初に承認を受け、融資額も次点のルーマニア(167億ユーロ)を大きく上回り、突出している。

SAFEは、欧州の安全保障強化を背景に創設されたEUの投資融資制度で、防衛装備の迅速調達と欧州防衛産業の生産能力拡大を目的としている。ポーランドでの対象分野は、東部国境の防衛強化プログラム「東の盾(Tarcza Wschód)」の実施をはじめ、対ドローンシステム、防空システム、砲兵、装甲車両の開発など、広範囲に及ぶ。

同制度は複数加盟国による共同調達を優遇する仕組みだが、ポーランド政府が計画する契約の大半は単独調達だ。政府はSAFE資金の89%が国内産業へ流れるとしており、弾薬やロケットを手掛けるメスコ(MESKO)、エレクトロニクスのボイスコベ・ザクワディ・エレクトロニチュネ(Wojskowe Zakłady Elektroniczne)、重装備品のフタ・スタロバ・ボラ(Huta Stalowa Wola)など、主要防衛企業の生産能力拡大が見込まれる。

EUはSAFEを、防衛産業支援策にとどまらず、「欧州防衛共通市場」形成の第一歩として位置付けている。認証制度や法規制の違いが域内企業の協力を阻害しているとの認識を示しており、今後は防衛産業の統合や共同生産体制の強化が進む可能性がある。

協定署名を巡り国内で政治論争も

政府は、SAFEによる低利融資は軍近代化と国内防衛産業育成を同時に進める好機であると強調してきた。これに対し、野党の「法と正義(PiS)」や「同盟」は、EUの条件付きメカニズムによって欧州委員会が国内の防衛政策へ介入し得ると主張した。加えて、米国や韓国(2025年12月2日付地域・分析レポート参照)など欧州域外のパートナー国からの調達減少リスクを指摘した。

カロル・ナブロツキ大統領は2026年3月、議会が可決したSAFE実施法案に拒否権を行使し、EUから政府が融資を受けることは「国家主権、経済安全保障、軍事安全保障を損なう」と批判した。

これを受け政府は、大統領の拒否権を回避しながら、SAFEに基づく融資協定を締結するため、国防相と財務・経済相に同協定への署名権限を付与するとともに、政府に代わりポーランド開発銀行(BGK)が既存の軍事支援基金(FWSZ)向けに融資を借り入れる方式へ切り替える方針を決定。当初のSAFE資金用の特別基金を新設する案を撤回し、制度運用を既存の枠組みに切り替え、協定締結を実現した(注)。

(注)ただし、FWSZでは資金の使途がポーランド軍の近代化に限定されるため、警察や国境警備隊など内務・行政省傘下の機関へのSAFE資金の充当は不可能となった。政府はEU資金以外の財源による代替案を準備しているとしているが、詳細は明らかにしていない。

(金杉知紀)

(ポーランド、EU、米国、韓国)

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