アヌティン首相、所信表明で構造改革の推進へ
(タイ、中東)
バンコク発
2026年04月13日
タイのアヌティン・チャーンウィラクン首相は3月30日の第2次内閣発足後の4月9日、国会で所信表明演説
を行った。
昨年の短期政権運営での成果として、経済や地政学的要因など、さまざまな不確実性の中においても、クイック・ビッグ・ウィン政策(注)を推進し、停滞していたタイ経済を、2025年第4四半期には予想を上回る成長率へ押し上げたことを挙げた。次に、政府は、現在の中東紛争により生じている、世界の原油および天然ガスの生産と輸送の混乱に対して、その影響緩和に努めていると説明した。内閣が正式に発足した際には、財政規律を維持し、各種政策の実施を加速させる方針を示した。
さらに、中長期的な課題として、タイが直面する家計債務問題、高齢化社会、麻薬問題などに対し、経済・社会構造改革を進める方針を表明した。加えて、行政運営については、包括的な統合管理体制の下で実施するとした。
今後取り組む政策については、経済、外交・安全保障、社会、災害・環境、行政運営・法制度改革の5つを重点分野として設定した。概要は次のとおり。
1.経済
- すべての国民に平等かつ包摂的な機会を創出
- 経済構造の変革により「中所得国のわな」からの脱却
- タイ製品の輸出促進と市場多角化によるリスク管理
- 伝統的農業から、AIなどを活用した計画的・安全・持続可能な農業への転換
- 東南アジアでの有望旅行先として、高付加価値なサービスを提供
2.外交・安全保障
- 世界的な地位と信頼を築く積極外交
- 国益を優先した安定的な全方位外交
- 2028年までにOECDに加盟を目標とする経済外交
- 国境における安全保障の確保
- 国民の生命と財産を保護
- 国防システムと軍の近代化
- 4年契約の「10万人の志願兵」プロジェクトの実施
3.社会
- 真の教育無償化、就労直結型の無償教育、および「いつでもどこでも学べる」環境の整備
- パーソナルデータの連携による医療アクセスの向上
- 「シルバーエコノミー」を通じた高齢化社会への対応
4.災害・環境
- ビッグデータなどを活用した体系的な水管理と災害防止
- 全世帯向け国家災害保険の構築
- 2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ目標の達成
- 都市計画とバランスの取れた環境保全
5.行政運営・法制度改革
- スマートデジタルシステムを通じた迅速な行政対応
- 公務員制度改革
- 不必要な手続きや重複する法律の廃止
- 構造的な汚職の撲滅
(注)第1次アヌティン内閣が打ち出した、「経済と観光の活性化」「家計債務の軽減」「中小企業支援」「貯蓄促進」「将来の投資促進」の5つを主要な目標とした「短期刺激策、長期的効果、広範な波及」に焦点を当てた政策。個別の主な施策として、コン・ラ・クルン・プラス(2025年10月10日記事参照)やタイランド・ファストパス(2025年11月19日記事参照)などがある。
(野田芳美)
(タイ、中東)
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