米USTR、英国との薬価協定合意を発表、追加関税を課さず
(米国、英国)
ニューヨーク発
2026年04月08日
米国通商代表部(USTR)は4月2日、英国と医薬品価格設定に関する合意に達したと発表
した。両国は2025年12月に予備的合意を発表しており(2025年12月9日記事参照)、合意文書では、今回の合意は医薬品に関する米英関係を強化すると記した。
合意において示された主な措置は、次のとおり。
- 英国は、2036年までに新薬購入に関する支出をGDP比0.3%から0.6%へ倍増させる。
- 英国は2026年4月以降、国営医療サービス(NHS)が新薬に支払う価格(割引やリベートなどを除く)を25%引き上げる。
- 価格引き上げは、新薬の利用を減少させる障壁の設定やリベートの増額などによって相殺されてはならない。
- 英国は、国立保健医療研究所(NICE)がNHSでの医薬品採用可否を判断する費用対効果基準である質調整生存年(QALY:Quality-Adjusted life year、注1)の閾値(しきいち)を、従来の2~3万ポンド(約2万6,800~4万200ドル、1ポンド=約1.34ドル)から2万5,000~3万5,000ポンドへ引き上げるとともに、EuroQol 5-level(EQ-5D、注2)を導入・採用する。
- 英国は、「ブランド医薬品価格、アクセス・成長に関する自主的スキーム(VPAG、注3)」に基づきNHSが製薬会社から売上高などに応じて受け取る還元率を15%に制限する。併せて、英国政府は、現行のVPAGに代わる新たなスキームを策定するための作業部会を設置する。
- 両国は医薬品サプライチェーンを強化するため、「米英医薬品サプライチェーン・パートナーシップ」を設立する。
- 両国は、医療機器の相互承認に関する協力強化に向けて交渉する。
- 英国の全ての主要な製薬企業が、米国の保健福祉省および商務省と薬価に関する最恵国待遇および関税について合意を締結し、その合意を順守することを条件として、米国は2026年1月1日~2029年1月19日まで、英国の医薬品(特許品および非特許品)に対して、1962年通商拡大法232条に基づく関税を課さない。また米国は、2025年12月1日~2029年1月19日まで、英国の医薬品(特許品および非特許品)に1974年通商法301条に基づく追加関税を課さない。米国は同期間中、英国の医療技術に対しても232条または301条に基づく追加関税を課さない。なお、これらの関税を課さない期間は両国が書面によって確認することで延長できる。
ドナルド・トランプ大統領は4月2日、232条に基づき、特許医薬品などに100%の追加関税を2026年7月31日から課すと発表した。ただし、英国製品に対する追加関税率は10%とし、米英間で締結される医薬品価格に関する合意に応じてゼロに引き下げると明らかにしていた(2026年4月3日記事参照)。USTRによる合意発表は、この232条関税賦課の発表と同日に行われた。「ロイター」(4月3日)によると、医薬品は英国の対米財輸出額の約5分の1を占め、トレーディング・エコノミクスによると、2025年の医薬品の対米輸出額は71億6,000万ドルに達した。
ジェミソン・グリアUSTR代表は、今回の合意について、「米英間の医薬品貿易における長年の不均衡に対処すると同時に、両国における投資と開発を促進する」、ハワード・ラトニック商務長官は「サプライチェーンを強化し、救命薬への『最恵国待遇』による手頃なアクセスを拡大し、ライフサイエンス投資における世界有数のハブとしての米国の地位を確固たるものにする」と声明で述べた。
(注1)寿命の長さという便益を生活の質に応じて調整した指標。1QALYは、完全な健康状態での1年間の生存に相当する。
(注2)健康状態を複数の項目について評価する指標で、患者の生活の質(QOL)を簡潔に把握するために用いられる。QALY算出の基礎データとしても活用されている。
(注3)患者のアウトカム向上と健康人口の推進、英国の経済成長支援、経済的で持続可能なNHSへの貢献を目的とし、保健・ソーシャルケア省、NHSイングランド、英国製薬工業協会(ABPI)の3者で合意されたスキーム。
(大垣ジャスミン)
(米国、英国)
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