ブラジルでは中東情勢の悪化で肥料価格の上昇に懸念

(ブラジル、中東)

調査部米州課

2026年04月30日

中東情勢の悪化に伴うホルムズ海峡の混乱により、ブラジルにおける肥料価格の上昇が懸念されている。複数の現地紙が報じた。4月14日付現地紙「バロール」によれば、ブラジルは肥料の約9割を輸入に依存する。そのうち、ホルムズ海峡を通過する中東地域からの肥料輸入は、2025年は輸入量全体の36%を占めた。今回の米国とイスラエルによる中東諸国への攻撃とホルムズ海峡の事実上の封鎖により、ブラジル向けの肥料供給が滞っている。なお、2021年時点では同地域からの肥料輸入は53%を占めていたが、現在は以前よりも中東依存度が低下している。

ブラジルが中東諸国から輸入する主要な農業肥料の1つが尿素だ。尿素を製造する過程では天然ガスが広く用いられる。今回の米国・イスラエルによる中東諸国への攻撃により、世界有数の天然ガス輸出国であるカタールの天然ガス施設が被害を受けており(2026年3月10日記事参照)、国際エネルギー機関(IEA)も世界の液化天然ガス(LNG)供給の約20%が一時的に市場から失われる、と分析する(2026年4月28日記事参照)。なお、IEAが4月24日に発表した天然ガスに関する報告書「Gas Market Report Q2-2026」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、今回の危機は短期的な供給減少にとどまらず、中期的な供給見通しも悪化させるものだという。

現地紙「バロール」(4月14日付)によれば、ブラジルにおけるトウモロコシ生産への影響が大きいとみられる。中でも、サフリーニャと呼ばれるトウモロコシの第2期作は2月から8月にかけて生産および収穫が行われる(注)。ブラジル農牧畜研究公社(Embrapa)によれば、近年はトウモロコシ生産量の7割以上がサフリーニャによるもの。

現地紙「グローボ」(3月21日付)は、トウモロコシ生産コストの約4割が肥料の輸入に依存していることから、供給不足による肥料価格の上昇が、生産コスト全体を押し上げることを懸念する。また、4月27日付「CNNブラジル」によれば、ブラジル国内の尿素価格が急騰しており、中東情勢の悪化が長期化すれば、生産者は肥料の使用量を減らして生産減少のリスクを負うか、コスト上昇を受け入れるかのどちらかを選択することになる。

(注)ブラジルにおけるトウモロコシ生産は年に2回行われる。第1期作は9月から翌年2月まで、第2期作(サフリーニャ)は2月から8月にかけて生産と収穫が行われる。近年はサフリーニャによるトウモロコシの生産量が第1期作を上回っている。

(辻本希世)

(ブラジル、中東)

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