フランスの年金方針評議会、年金受給開始年齢の65歳への引き上げを提案
(フランス)
パリ発
2026年04月02日
フランスの年金方針評議会(COR)は3月26日、「年金制度の収支均衡策が及ぼすマクロ経済への影響」と題した報告書を公表した。本報告書は、フランス国庫総局(DGT)、フランス景気経済研究所(OFCE)、およびパリ経済学校(PSE)の研究を基に作成されており、「受給開始年齢の65歳への引き上げを行わなければ、景気後退のリスクが生じうる」と結論を示した。
首相直属で、フランスの年金制度の中長期的見通しを分析、監視する任務を担う独立的機関であるCORは、年金財政の収支均衡に向けて(1)年金給付額の引き下げ、(2)社会保険料の雇用主負担分の引き上げ、(3)社会保険料の従業員負担分の引き上げ、(4)年金の受給開始年齢の引き上げの4つの検討可能な措置のうち、(1)、(2)、(3)の場合は、景気を後退させる要因となるとした。
(1)の場合、世帯年収の減少により消費が鈍化し、経済活動が減速して短期的な雇用減少につながる。長期的にはこうした影響が消えても、年金生活者の世帯年収は現行水準と比べて低くなる。(2)と(3)の場合、投資抑制による生産コストの上昇、または収入減による消費の鈍化により、短期的にはGDPを約0.1ポイント押し下げ、雇用の減少も招く。
一方、(4)の場合、年金の受給開始年齢を1年引き上げると、21万~24万人の雇用創出が見込まれ、GDP成長率を0.7~0.9ポイント押し上げる。受給開始年齢の引き上げは、失業率を一時的に上昇させる可能性があるが、長期的には経済活動の拡大や労働市場の段階的な調整により消失し、財政全体が改善する。
CORは毎年、フランス国立統計経済研究所(INSEE)の人口統計学的な予測を基に、年金制度に関する財務状況の予測を行っている。2025年6月の年次レポートでは、2024年の年金財政赤字を17億ユーロ(GDPの0.1%)とし、2025年には50億ユーロ(GDPの0.2%)に達する見通しとしていた。しかし、同レポートで使用した2021年のINSEEの予測が、2026年1月に公表された人口統計の実際のデータと大きく異なっていたため、CORは同年2月、更新されたデータを基に新しい予測を行うと発表していた。
年金受給開始年齢を段階的に62歳から64歳に引き上げる年金改革(2023年4月20日記事参照)は、2023年に導入後、2026年社会保障予算法により停止(2025年12月19日記事参照)された。改革の停止は2028年1月までと予定されており、年金改革の今後の行方を注視する必要がある。
(クロティルド・クニッグスドーファー、奥山直子)
(フランス)
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