フランス下院、2026年社会保障予算案を可決、年金改革停止が正式決定

(フランス)

パリ発

2025年12月19日

フランス下院は12月16日、2026年の社会保障予算案(PLFSS)を最終審議で可決し、成立させた。これにより、2023年に導入された年金改革の停止が正式に決まった(2025年10月28日記事参照)。

採決結果は賛成247票、反対232票、棄権90票で、わずか15票の僅差となった。少数与党のルネッサンスと民主運動(MoDem)に加え、年金改革停止を条件にした社会党が賛成に回り、法案成立を後押しした。一方、極右の国民連合(RN)と極左の不服従のフランス(LFI)は反対票を投じ、中道右派のオリゾンは年金改革停止や増税に反対するエドワール・フィリップ党首の呼びかけに沿って棄権した。右派の共和党(LR)は賛否が分かれ、環境派は棄権または反対に回った。

政府が10月14日に提出した当初案では、2026年の赤字を2025年の230億ユーロから175億ユーロに縮小する目標を掲げていた(2025年10月22日記事参照)。しかし、今回採択された最終案では、赤字は194億ユーロに達する見込み。政府は当初「赤字圧縮」を重視していたが、与党が過半数を持たない議会での攻防を経て、「社会的支援の維持・拡充」への転換を余儀なくされた。

当初案に盛り込まれていた基礎年金や社会保障給付の凍結策は撤回され、医療分野では予算を大幅に増額。医療保険支出目標(Ondam)は、当初の前年比1.6%増から3.1%増に引き上げられた。財源確保策として、補完的医療保険機関(相互保険組合、民間保険会社など)に2.05%の新税を課し、一部の資本収入に対する一般社会税(CSG)の税率を10.6%に引き上げる。一方、政府が当初導入を目指していた、患者の自己負担の年間上限額と定額負担の倍増案は撤回された。

セバスチャン・ルコルニュ首相は採択後、自身のX(旧Twitter)で「憲法49条3項(政府が議会の採決を経ずに法案を成立させることができる憲法条項)を使わず、厳しい議論を経て、下院は妥協案をまとめ上げた」と強調。数年続いた財政悪化に歯止めをかけ、赤字削減に向けた第一歩と位置づけたうえで、「(2026年)1月から関係者と協議し、社会保障財政を維持するための措置を講じる必要がある」と述べ、財政均衡に向けた追加策の必要性を示唆した。

(山崎あき)

(フランス)

ビジネス短信 98a83e1d9c8513dc