欧州産業界、産業加速法案を一定評価、内容の複雑さや不十分さを指摘する声も

(EU)

ブリュッセル発

2026年03月19日

欧州委員会が3月4日に発表した産業加速法案(IAA、2026年3月13日記事参照)に関し(注)、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、許認可の迅速化や公共調達を通じた低炭素製品の需要喚起策を評価したが、実行性や効果に疑問が残るとした。EUの成長は貿易に強く依存しているため、「EU域内産」要件については、リスクを適切に評価・理解する必要を指摘した。外国投資に関しては、対内直接投資審査規則(2025年12月16日記事参照)との整合性に課題があると述べた。

欧州中小企業連合会(SMEunited)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、同法案はサプライチェーンを構成する広範な中小企業にポジティブな波及効果をもたらすとしつつも、法案が対象とする戦略的分野の許認可の迅速化による他の手続きの遅滞や、域内産優先による過度なコスト増や納期遅延を招かないことが重要と述べた。

IAA案は「重要な一歩」だが、より強力な低炭素製品の需要喚起策が必要との声も上がった。公共調達などの要件について、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、鋼材も「低炭素」だけではなく「低炭素かつ域内産」とすべきと主張し、欧州化学工業連盟(Cefic)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、化学品が十分に含まれるようにすべきと提言した。水素関連産業団体ハイドロジェン・ヨーロッパ(Hydrogen Europe)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、許認可の迅速化や電解槽の製造支援は評価しつつも、需要サイドの強化策が十分でないと述べた。また、二次立法の多さや、公共調達における「域内産」要件ではEUと自由貿易協定(FTA)や関税同盟、WTOの政府調達協定(GPA)を締結する国を含む一方、入札ではGPA締結国・地域は含まれず、「域内産」とみなす原産国が異なるなど、法案の複雑さも指摘した。欧州風力協会(ウインド・ヨーロッパ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、英国など「信頼できるパートナー国」はEU加盟国と同等に扱い、条文をより明確かつ簡素にし、EUレベルでルールを調和し加盟国が執行することが重要と述べた。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、迂回輸出といった現地調達率要件の実効性を損なうリスクの回避には、信頼できる貿易相手国について十分な評価が必要と提言した。また、公共調達にとどまらず、より多くの域内産車の購入に対しEUレベルのインセンティブを与え、域内生産の支援につなげるべきと主張した。バッテリー部門の団体リチャージPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、EV分野での厳格な域内産要件の義務化を支持し、調和的かつ予見可能な枠組みで実施することや、コスト高を理由とした加盟国の適用回避など、法案の抜け穴を塞ぐ必要があると指摘。さらに、人材育成や研究開発分野などでの施策も同時に必要と述べた。

欧州太陽光発電協会(ソーラーパワー・ヨーロッパ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、太陽光発電は規則発効3年後に、公共調達などにおいて域内産要件が導入されるのに対し、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は1年後と早期に適用されることを懸念。規模拡大が求められる段階での過度な要件は逆効果になるリスクを指摘した。

このほか、欧州ヒートポンプ協会(EHPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、EUはすでに年800万台(現在の生産台数の約3倍)の生産能力を有しており、域内産要件よりも電力関連税の減免や消費者向け需要喚起策が必要と主張した。

(注)各産業団体の声明は全て3月4日付。

(滝澤祥子)

(EU)

ビジネス短信 a0ec5f801af42c1b