国連、情勢悪化によりアラブ地域で1,500億ドルの損失と報告、世界銀行は支援を表明
(世界、中東、アフリカ)
調査部中東アフリカ課
2026年03月31日
国連西アジア経済社会委員会(ESCWA)は3月19日、アラブ地域における情勢悪化に関する報告書を発表
した。同報告書によると、2月末以降の中東情勢の悪化(特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢」参照)により、アラブ諸国の1カ月間の損失額は1,500億ドルとなり、アラブ地域全体のGDPの3.7%相当に上る可能性があると推計した。
同報告では、ホルムズ海峡を通る船舶は商業船舶への攻撃もあり、通航量が急減し、貨物輸送の混乱による損失は1日当たり約24億ドル、2週間での貿易損失は約300億ドルに達すると推定する。また、2月28日から3月12日までの間にアラブ地域内の主要9空港で計1万9,000便近くが欠航となり、航空会社の収益損失は19億ドルになるとの推計だ。貿易・輸送のほか、エネルギーや金融セクターにおいても、地域経済の悪化に波及するとした。
同報告書によると、今回の事態の悪化以前から、アラブ諸国の人口の43%に当たる約2億1,000万人が既に紛争の影響を受ける環境下で生活しており、そのうち8,200万人が人道支援を必要としていたという。さらに、エジプト、レバノン、チュニジアなどエネルギー輸入国では、原油価格が1バレル100ドルとなった場合、2026年度予算が約68億ドル増加し、財政が逼迫している中、さらに財政的圧力を強めることになる。
なお、WTOは中東情勢悪化により、2026年の貿易成長率を押し下げると予測するほか(2026年3月26日記事参照)、OECDも2026年の経済の下振れリスクがあるとの見通しだ(2026年3月30日記事参照)。
世界銀行は3月26日、加盟国が中東情勢悪化に伴う危機を乗り切れるよう迅速に対応し、支援を行うとの声明を発表
した。同発表では、2月から3月にかけて原油価格は40%近く上昇し、アジア向けに輸送される液化天然ガス(LNG)の価格は60%以上も上昇、3月には窒素系肥料の価格も50%近く上昇したという。これらの価格高騰や、関連して農業への影響により危機に陥る国が出てくるとの見込みだ。このため世界銀行は、各国に対して即時の財政支援と政策面の支援、雇用や経済成長の回復に向けた民間セクターの支援などを組み合わせ、大規模な対応を行う準備をしているという。
中東情勢は特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢」も参照。
(井澤壌士)
(世界、中東、アフリカ)
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