2026年の世界財貿易は1.9%成長へ減速、中東情勢が重荷、WTO見通し

(世界)

調査部国際経済課

2026年03月26日

WTOは、3月19日に発表した最新の世界貿易見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2026年の世界の財貿易量を前年比1.9%増と予測した(添付資料表参照)。2025年の4.6%から大幅に減速するもので、人工知能(AI)関連貿易の急増や米国の関税回避を目的とした前倒し輸入など、2025年の特殊要因が一巡することを踏まえた。

WTOは一方、中東情勢の混乱によりエネルギー価格が高止まりする「高エネルギー価格シナリオ」では、財貿易成長率が0.5%ポイント押し下げられ、1.4%にとどまるとの見通しも示した。ホルムズ海峡の実質的封鎖により、物流の混乱が生じ、主要国の輸送コストや保険料が上昇している。

地域別では、2026年の輸出で最も高い伸びを示すのがアジア(3.5%)で、北米(1.4%)、CIS(1.3%)、アフリカ(1.2%)が続き、中東は0.6%と伸びが大幅に鈍化する見通しだ。輸入でも、アジアが3.3%で伸び率首位、次いでアフリカ(3.2%)、中南米(2.5%)、欧州(1.3%)と続き、北米の輸入は横ばい(0.3%)にとどまるとする。高エネルギー価格シナリオ下では、アジアや欧州などの燃料純輸入地域でコスト増により輸入が抑制されベースライン予測を下回る一方、純輸出国は収入増により輸入の伸びが上振れする見通しだ。

なお、WTOは同時に発表したサービス貿易の見通しについて、2026年には4.8%増と、2025年の5.3%増からやや減速すると見込む。中東情勢の緊迫化により、国際輸送回廊が混乱し、ホルムズ海峡を通過する商船は1日当138隻からほぼゼロにまで急減。同地域は世界の輸送サービス輸出の7.4%を占める中、4万便以上の航空便が欠航し、輸送費と保険料の構造的上昇リスクが生じている。

WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は、今回の見通しは「高付加価値製品やデジタルサービス貿易、サプライチェーン適応、関税の報復合戦回避、といった要因に下支えされた世界貿易の回復力を示した」ものと説明した上で、中東情勢悪化が長期化すれば、エネルギー価格、食料安全保障、企業コストなどに深刻な影響を及ぼす可能性があるとも指摘した。

こうした状況にあって、同事務局長は「WTO加盟国は、予測可能な貿易政策を維持し、サプライチェーンを強靭(きょうじん)化することで、これらの影響を緩和し、世界の経済的負担を軽減することは可能」との見方も示した。2026年2月末時点では、世界貿易の72%で最恵国待遇(MFN)ベースの関税率が適用されており、大きな揺らぎにさらされながらも多国間貿易体制の土台は維持されている、とWTOは分析した。WTOは、情勢が短期で沈静化しAI関連需要が堅調に推移した場合、2026年の貿易量の伸びは2.4%、2027年には2.7%に上振れする余地もあると予測している。

(吾郷伊都子)

(世界)

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