米連邦議会上院の財政委員会がUSMCAに関する公聴会開催
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2026年02月16日
米国連邦議会上院の財政委員会は2月12日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に関する公聴会
を開催した。
USMCAは、協定発効16年目(2036年7月)に失効すると定められている。ただし、発効6年目(2026年7月)に見直しを行い、3カ国が合意した場合、16年後(2042年7月)まで延長される。3カ国のいずれかが延長に合意しない場合、以降毎年、失効まで見直しを実施する。見直しに向け、米国通商代表部(USTR)は、USMCAの発効を定めた米国のUSMCA実施法に基づき、2025年9月にパブリックコメントを募集し、12月に公聴会を行った(2025年12月12日記事参照)。また、USTRは見直し方針について、同月に議会に報告を行った(2025年12月19日記事参照)。さらに、USTRは2026年1月に、メキシコと見直しに見向けた正式協議開始で合意したと発表している(2026年1月29日記事参照)。
今回、あらためて行われた公聴会の位置付けについて、財政委員会のマイク・クレイポ委員長(共和党、アイダホ州)は、「USMCA の(引き続きの)実施と米国におけるビジネスの確実性を確保するために必要な議論を継続するための機会だ」と述べた。その後、公聴会では4人の証人が証言した。元連邦議会下院歳入委員長のケビン・ブレイディ氏は、USMCAにより3カ国間の関税率が基本的に撤廃されていることが、長期的な展望に基づく米国への投資を呼び込んでいると主張した。その上で、7月に延長に合意できない場合、「不確実性を生む最悪のタイミング」になり得ると述べた。米国自動車部品工業会(MEMA、注1)のポール・マッカーシー代表は、域内のサプライチェーンを強固なものにするうえで、USMCAの継続が必要と主張した。
一方で、USMCAの改善を要望する声も上がった。ブレイディ氏は、特にメキシコに対して、中国からの迂回輸出や投資を審査するための枠組みの構築が求められると述べた。また、米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO、注2)の貿易・国際経済担当政策スペシャリストのエリック・ゴットワルト氏は、メキシコとの賃金格差により、米国とカナダは不平等な競争条件に置かれているとし、それらの改善のためにUSMCAの「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM、注3)」の活用促進などが求められると意見した。アイダホ州で農業を経営するテッド・ファン・デル・シャーフ氏は、カナダ政府が乳製品輸入に設定している関税割当制度(TRQ)の運用について、見直し時の改善を求めた。
連邦議会ではUSMCA見直しに向けた議論が進む一方、USTRのジェミソン・グリア代表がUSMCAを米国とカナダおよびメキシコそれぞれとの2国間協定に分割する可能性も示唆するなど、トランプ政権の意向は不透明だ。議会と政権の思惑は必ずしも一致していないと考えられ、両者の動向が引き続き注目される。
(注1)自動車、トラック関連の直納部品メーカーや市販部品メーカーの業界団体で、1,000社以上の会員を擁する。
(注2)63の国内外の労働組合と総計1,500万人近い組合員で構成される、米国最大の労働組合連合。
(注3)締約国内に所在する企業の事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、労働権侵害の事実が確認されれば、USMCAの特恵措置の停止などの罰則が適用され得る。ただし、米国・カナダ間にはRRMは設けられていない。
(滝本慎一郎)
(米国、カナダ、メキシコ)
ビジネス短信 a53b1dbe6670830b






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