USMCA見直しに向けた公聴会終了、USTRは議会へ口頭報告を予定
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2025年12月12日
米国通商代表部(USTR)は12月3~5日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しに向けた公聴会
を行った(初日と2日目の公聴会は、2025年12月12日記事参照)。
最終日となる12月5日は、IT関係の業界団体や労働組合などが参加した。世界最大級の先端技術見本市「CES」を運営する全米民生技術協会(CTA)は、USMCAが中国との競争に役立つと主張した。対中依存度を低減したいCTA加盟企業にとってメキシコは主要な進出先とも述べ、北米3カ国での協定を継続するよう訴えた。コンピュータ通信産業協会(CCIA)は、人工知能(AI)に関する約束を付属書に加えることで、協定を「再交渉」せずに「更新」できると提案した。CCIAは、リスクを特定するベストプラクティスの共有などを通じて、AI政策の協力深化を目的とする3カ国間のフォーラムの設置などを提案している。
一方で、労働組合は、メキシコでの労働者の搾取に対応できていないと批判した。米国最大の労働組合連合である米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は、「抜本的な変更」のない協定の「16 年間の早期延長」に「断固として反対」すると主張した。
USMCA実施法はUSTRに対して、見直しに先立ってUSMCAの運用に関するパブコメの募集などを行い、見直しの180日前、すなわち2026年1月までに、見直しに向けて提案する具体的な措置やUSMCAの延長に関する米国の立場などについて、議会へ報告するよう義務付けている。今回の3日間の公聴会の終了に伴い、USTRによる議会報告が次のステップとなる。
米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(12月9日)によると、USTRは議会への報告を口頭で行う予定だと明らかにした。これに対し、米国連邦議会上院で通商を所管する財政委員会のロン・ワイデン少数党筆頭理事(民主、オレゴン州)は「米国がカナダ・メキシコとの見直しに入る前に、議員と国民が米国の立場を明確に示した報告書を閲覧できるようにすべきだ」と批判している。首都ワシントンの識者からも、この報告書によって、政権の見直しへの方針が明らかになるだろうと指摘されていた。
なお、USTRのジェミソン・グリア代表は、政治専門紙「ポリティコ」(12月4日)に対して、USMCAをカナダとメキシコそれぞれとの2国間協定に分割する可能性があると述べた。グリア氏は「カナダ経済との関係は、メキシコ経済との関係とはまったく異なる」とし、労働環境、生産品、輸出入の状況が異なることから、「3カ国を結びつけることに経済的な意味はない」と主張した。また、トランプ政権が USMCA の見直しで主眼とする目標の1つは、米国での自動車生産台数の増加だとし、原産地規則を強化して「第三国がこの協定の恩恵を受けないようにする」ことで、その目標達成に前進できると述べた。
ワシントンの識者の間では、トランプ政権が2国間協定を志向していることなどから、見直しにおいて3カ国で合意することは難しいと見通されている(2025年10月17日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ、カナダ)
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