ドイツ産業界、サプライチェーン・デューディリジェンス法の停止を求める

(ドイツ、EU)

調査部欧州課

2026年02月06日

ドイツ機械工業連盟(VDMA)、連邦化学使用者連盟(BAVC)など17のドイツ主要業界団体は1月29日、サプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG、注1)の完全な停止を求める共同声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。

同声明では、現在審議されている改正法案は報告義務の廃止と注意義務に対する罰則の軽減にとどまっており、「顕著な企業負担の軽減には不十分」と指摘。LkSGの完全な停止と、2025年12月に政治合意したEUの企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)簡素化(2025年12月16日記事参照)の迅速な実行を求めた。LkSGが停止されない場合も、LkSG適用範囲(国内の従業員数1,000人以上)を、CSDDD簡素化法案の適用対象基準(注2)に「直ちに適合させるべき」とし、ドイツ独自の基準が課されることで、ドイツ企業に「競争上の不利や法的不安が生じる恐れがある」と懸念を示した。また、CSDDDの国内法化期限は2028年7月26日、企業への適用開始は2029年7月26日に延期される見込みだが、それまで先延ばしにせず、「必要な措置を直ちに実施するよう」要請した。

連邦経済・輸出管理庁は報告書の審査を停止、注意義務は継続

2025年5月に発足したメルツ政権は連立協定書に、CSDDDに置き換えるかたちでLkSGを廃止し、移行期間中の企業負担軽減を明記していた(2025年4月11日記事参照)。その後、連邦内閣は9月3日、(1)LkSGの報告義務を2023年1月1日までさかのぼって廃止し、(2)注意義務に対する重大な違反のみに罰金を科すなど企業に対する罰則を軽減する、LkSGの改正法案を承認した。これを受け、同法の履行確保を担当する連邦経済・輸出管理庁(BAFA)は10月1日、(1)報告書の審査の即時停止と、(2)特に深刻な違反(注3)にのみ罰則を適用すると発表した。11月7日以降、BAFAのポータルから報告書提出は不可能となった。これは一時的な行政措置で、人権・環境に対する注意義務は引き続き適用される。

連邦内閣による改正法案は2026年1月16日、初めて連邦議会(下院)で審議され、さらなる審議のため委員会に付託された。今後の審議・立法の過程を注視する必要がある。

(注1)LkSGの詳細は、ジェトロ「ドイツ サプライチェーンにおける企業のデューディリジェンス義務に関する法律 (参考和訳)PDFファイル(550KB)」(2022年5月)、ジェトロ「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第2版)」(2025年7月)参照。

(注2)2025年12月の政治合意によると、EU企業は全世界純売上高15億ユーロ超かつ従業員数5,000人超、域外企業はEU域内純売上高15億ユーロ超に引き上げる。これにより、対象企業数を現行の約7割削減する見込み。

(注3)BAFAは違反の規模、範囲、是正不能性の3つの要件に基づき慎重に審査し、重大な人権侵害に対する最終手段として罰金の賦課を検討するとしている。

(川嶋康子)

(ドイツ、EU)

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