米運輸省、EV充電器補助金付与に「バイ・アメリカ」100%要件案を公表

(米国)

ニューヨーク発

2026年02月13日

米国運輸省のショーン・ダフィー長官は2月10日、連邦資金を活用する電気自動車(EV)の充電器設置事業について、バイ・アメリカ条項(注)で定められた要件に関し、国内調達比率を現行の55%から最大100%に引き上げる修正案を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。国内製造の強化や雇用創出、国家安全保障上の懸念への対応を目的とする。

バイ・アメリカとは、州政府などが連邦政府の補助金を用いて実施する運輸およびインフラ事業において、米国内製品の使用を義務付ける国内調達要件を指す。各連邦政府機関がそれぞれの調達規則においてバイ・アメリカ条項を定めている。EV充電設備を所管する連邦高速道路局(FHWA)では、米合衆国法典第23編第313条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、連邦政府が補助する事業で使用される鉄、鋼鉄および製造品などが、米国で生産されることを連邦資金利用の条件としている。これに対し2023年2月に当時のバイデン政権は、EV充電設備の資材について「国内製品を優先させることは公共の利益に矛盾する」との理由から、米国で最終組み立てが行われ、かつ部品コストの55%以上分が米国で生産されている場合に限りバイ・アメリカ条項の適用を免除外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2024年1月19日記事参照)。

EV充電設備を巡っては、各州が連邦政府の方針に翻弄(ほんろう)されている。2025年2月には、トランプ政権が総額50億ドルの「国家EVインフラプログラム(NEVIフォーミュラ・プログラム)」(2022年9月29日記事参照)などへの資金凍結を発表。これに対し、ワシントン州など20州とコロンビア特別区が政権を提訴し、2026年1月に連邦地裁が政権の違憲性を判断した(2026年1月28日記事参照)。その間、政権は方針を転換し、資金活用を促す内容のガイダンスを公表し、事業の再開に向けた動きを見せていた。

FHWAのショーン・マクマスター局長は今回の修正案公表にあたり、「バイデン(前大統領)・ブティジェッジ(前運輸長官)政権の空約束はEV充電器の数を減らし、国内製造業に打撃を与えた。トランプ政権は重要なサプライチェーンの長期的な強さと安定を確保するため、米国の産業基盤を強化することに尽力している」と述べた。

一方、今回の修正案に対し専門家の見方は厳しい。EVを推進する業界団体のエレクトリフィケーション・コーリションは「現在、EV充電器メーカーは100%の基準を満たすことができず、今回の変更は事実上、NEVIフォーミュラ・プログラムの目標と、全国各地で積み重ねられてきた長年の投資に終止符を打つことになる」との見解を示した(2月10日)。

FHWAは官報掲載後、30日間パブリックコメントを募集外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますする(Docket No.:FHWA-2025-0070)。

(注)連邦政府による資金援助が行われる事業の調達において、さまざまな法令により、米国産品が優遇される場合に用いられている用語。各機関の調達規則においてバイ・アメリカ条項を設けている。州政府が連邦政府の補助金を用いて実施する大規模な運輸およびインフラ事業について、その事業に用いられる鉄鋼などが米国製であることを求めるもので、各機関のルールによって実施されている。なお、連邦政府による政府調達に関し、米国産品を優遇する「バイ・アメリカン法」とは異なる。ジェトロ「バイ・アメリカン法およびバイ・アメリカ条項についてPDFファイル(304KB)」参照。

(大原典子)

(米国)

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