米下院、EV充電器のバイ・アメリカ適用免除取り下げに関する共同決議案を可決

(米国)

ニューヨーク発

2024年01月19日

米国連邦下院は1月11日、連邦道路局(FHWA)が2023年2月21日に制定した「電気自動車(EV)用充電器(注)に関するバイ・アメリカ要件の免除規制」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを取り下げる共同決議案(S.J.RES.38PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))を209票対198票で可決した。共和党議員のほか、民主党のジャレッド・ゴールデン議員(メイン州)とドン・デービス議員(ノースカロライナ州)も賛成票を投じた。同決議案は共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)が2023年7月に提案したもので、既に上院では11月8日に可決していた。

バイ・アメリカ規則(タイトル23チャプター313)では、運輸省が管理する資金の割り当てにあたり、インフラ事業で使用する建材などが米国製であることを義務付けている。しかし、国内調達要求を適用することが公共の利益に反する場合などには「一般免除」として、同義務の適用免除を認めている。FHWAは免除規制の中で、EV用充電器の資材など「国内製品を優先させることは公共の利益に矛盾する」との理由から、2024年6月30日までに米国で最終組み立てが行われ、同年10月1日までに設置が開始された機器については適用免除を認めることや、2024年7月1日以降に米国で最終組み立てが行われた機器に関しては、部品コストの55%以上が米国で生産された機器に限り、適用免除を認めることを盛り込んだ。EV充電器を一時的に一般免除の対象から外し、免除規制の下で新たに免除期間を定めることで、段階的な適用免除の廃止を念頭に入れている。

これに対し、ルビオ上院議員は「米国にEV充電ステーションを建設するために50億ドルの税金を費やすのであれば、それは米国人によって米国で米国製品を使用して作られるべきだ」と反対を表明。下院運輸・インフラ委員長の共和党のサム・グレイブス議員(ミズーリ州)は「適用免除は国内投資を損ない、外国に力を与える危険がある。政権が今後もEVへの大規模な移行を推進するつもりなら、バイ・アメリカの要件を確実に満たし、順守すべきだ」と述べるなど、適用免除の取り消しを求める動きもある(政治専門誌「ポリティコ」1月11日)。一方で、ホワイトハウスは、今回の決議案が実行されれば、EV充電器に対する一般免除が適用されることとなり、バイ・アメリカ要件の適用が全面的に免除となって、むしろ中国を含む競合国で製造された充電器に連邦資金を充てることになると指摘する。

ホワイトハウスは、決議案が下院で可決された場合には大統領拒否権を発動すると表明していた。大統領拒否権を無効として決議案を成立させるには、上下両院で3分の2の賛成が必要なため、現議会で同決議案が可決される可能性は低いとみられている。

(注)EV 充電器、関連する支払いシステム、配電システム、電気通信・ネットワーク機器、エネルギー貯蔵システム、その他のサポート機器・システムを含む。

(大原典子)

(米国)

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