与党支持率低迷の中、秋季予算案から異例の方針転換

(英国)

ロンドン発

2026年01月13日

英国政府は2025年12月23日、2026年4月に導入予定の相続税の農業資産控除および事業資産控除の限度額を、当初案の100万ポンド(約2億1,100万円、1ポンド=約211円)から250万ポンドに引き上げると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。与党労働党に対する支持率が低迷する中、秋季予算案の発表からわずか1カ月での異例の見直しだ(2025年11月27日記事参照)。秋季予算案で盛り込まれた、配偶者間での控除譲渡も含めると、最大500万ポンドまで非課税で相続可能となるため、この見直しにより、控除限度額導入の影響を受ける相続資産は375件から185件へと半減する。

全国農業者組合はこれを歓迎し、「常識が通じ、政府が耳を傾けてくれたことに感謝する」とコメントした。同組合は、12月2日の議会で労働党議員30人以上が関連議案の採決を棄権したことも、方針転換に影響したと分析している。

支持率低下を懸念する与党内からの声で方針転換が進む兆候

1月7日の議会では、ホスピタリティー業界のビジネスレート(注)の見直しを求める与党議員の提案に対し、キア・スターマー首相が「今後さらにどのような支援や対応を講じることができるか、引き続き業界と連携して協議を続けていく」と答弁し、追加措置の可能性を示唆した。

ビジネスレートについては、新型コロナ禍で暫定措置としていたホスピタリティー業界向けの減免(現行40%)の終了に伴い、2026年4月からは、課税評価額50万ポンド未満の場合の課税率を他業界より5ポイント低く設定することで負担軽減を図るとしていた(2025年11月27日記事参照)。しかし、業界団体は「全く不十分」としてロビイングを強化している。

英政府の方針転換の背景には、労働党の支持率の低下があるとみられる。1月6日に発表された英国の調査会社ユーガブの世論調査では、労働党支持率(17%)が保守党(19%)に逆転され、リフォームUKの支持率(26%)には大きく水をあけられている。

相続税に続き、支持率低下を懸念する与党内からの声で、方針転換が進む可能性がある。

(注)地方自治体が非居住用(事業用)資産に課す固定資産税。詳細はジェトロの英国税制ページを参照。

(林伸光)

(英国)

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