秋季予算案への農業・食品業界の反応、ロンドンでは農民デモ

(英国)

ロンドン発

2025年11月27日

英国政府による2025年度秋季予算案発表日の11月26日朝、政府機関近くのロンドン・トラファルガー広場に20台以上の農業トラクターが集結した。2024年に発表された相続税の農業資産控除の見直し(2024年11月8日記事参照)が依然として撤回されないことへの不満を訴え、クラクションを鳴らしながらロンドン市内を走行した。2025年度秋季予算案では、農業資産控除の限度額100万ポンド(約2億500万円、1ポンド=約205円)を配偶者との間で譲渡可能とする内容が新たに盛り込まれたが、全国農業者組合は「一握りの農家を救済するだけで、大多数の農家に与える壊滅的な影響を変えるには不十分だ」とコメントした。

写真 トラファルガー広場に集結する農業トラクター(ジェトロ撮影)

トラファルガー広場に集結する農業トラクター(ジェトロ撮影)

食品業界も負担増

外食などのホスピタリティ業界もまた、2024年の予算案以来、不満を募らせていた。業界団体UKホスピタリティは、ビジネスレート(注)の減免措置の縮小、国民保険料の雇用主負担の増加、最低賃金の引き上げの三重苦に直面し、8万9,000人の雇用が失われたと訴えてきた。今回の予算案において、課税評価額50万ポンド未満の小売り、ホスピタリティ、レジャーのビジネスレートについては通常より5ポイント低い課税率が設定されることとなった。しかし、UKホスピタリティはコメントを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「5ポイントの割引は、賃金上昇などによるコスト増加を相殺し、事業継続可能性や雇用機会への悪影響を是正するには全く不十分」として、引き続き負担軽減を訴えた。最低賃金は2026年4月1日から引き上げることとされ、21歳以上の労働者については、4.1%引き上げ12.71ポンドとなる見込みだ。

砂糖入りの清涼飲料水に課税する清涼飲料水産業税については、課税対象の砂糖含有量の下限値を100ミリリットル当たり5グラムから4.5グラムに引き下げるとともに、乳飲料、乳代替飲料の免除が廃止されることとなった(2025年4月30日記事参照)。意見公募の段階では下限値を4グラムと提案していた。施行日も2027年4月から2028年1月に先延ばしになり、英国食品飲料連盟は政府の決定を歓迎している。

(注)地方自治体が非居住用(事業用)資産に課す固定資産税。

(林伸光)

(英国)

ビジネス短信 6e85bf6da7dbc654