インド、保険業の外資出資比率上限100%に向けた保険法改正法案が下院で可決

(インド)

調査部アジア大洋州課

2025年12月17日

インド下院は12月16日、ニルマラ・シタラマン財務相によって提出された「2025年保険法改正法案」を可決した(「ミント」紙12月17日)。改正法案の中には、保険業の外国直接投資(FDI)に関する規制緩和もあり、外国出資比率の上限が従来の74%から100%まで引き上げられる見込みだ。これにより、国内に進出する外資保険会社が増加することで競争環境が変化し、資本流入の促進が見込める。また、インド政府が2047年までに全国民への保険提供を目指す国家政策「インシュランス・フォー・オール」の実現に向けた保険普及率の向上にもつながることが期待される。FDI出資比率の引き上げは以前から国内でも取り沙汰されていたが(2025年8月25日記事参照)、今回の下院での可決を経てこの動きが加速されることとなる。

シタラマン財務相は下院決議の場で、「保険業界のFDI上限が100%になれば、外資保険会社は、従来のように国内パートナー企業を見つけて合弁会社を設立することなく、自社の単独出資で多額の資本を投入することが可能となるだろう」と述べた。

今回の保険法改正案ではFDI上限引き上げのほか、コンプライアンスに関する規制強化についても触れられている。保険契約者の保護を強化する目的から、インド保険規制開発局(IRDAI)の監督強化も図られた。例えば、契約違反などに関する保険会社ならびに保険仲介業者への罰金額の上限を現行の1,000万ルピー(約1,700万円、1ルピー=約1.7円)から1億ルピーと約10倍に増額し、違反内容や影響に応じて課すという。インド国内では、一部顧客のニーズに合わない保険会社の利益を目的とした不適切な販売が横行している状況(2025年6月16日記事参照)もあり、規制当局を中心にコンプライアンスの強化に努める方針だ。罰金の収益は、保険に関する意識向上と消費者の利益保護を目的に、新たに設立が検討されている「保険契約者教育保護基金」に積み立てられる予定となっている。

(野本直希)

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