インド保険業における外資の出資上限100%への引き上げについて政府は経済効果を強調
(インド)
調査部アジア大洋州課
2025年08月25日
インドにおける保険業の外国直接投資(FDI)の出資比率上限引き上げ(現在の74%→100%)は、2025年2月1日の連邦予算案において発表されている(施行時期は未定)。これについてニルマラ・シタラマン財務相は、8月12日に開催されたモンスーン議会で「より多くの企業がインド市場に参入し、雇用機会を創出するだろう」と述べた(「ビジネス・スタンダード」紙2025年8月13日)。さらに、同相は「当制度の改革は、保険業界に技術革新をもたらし、大幅な労働力拡大につながるだろう」とも述べた。
今後、外資系保険会社に向けインド市場が開放されることで、期待される経済効果は次のとおり。
(1)雇用創出への影響
当該措置は技術革新を促進し、保険引受・保険金請求処理など保険業務全体の自動化・迅速化につながる。また、保険業務にかかるコストの削減によって、保険引受人員から保険金請求処理担当者、カスタマーサービス担当者、保険数理士まで多岐にわたる業務の労働力拡大が期待される。
(2)インド進出保険企業の増加による競争環境の変化
これまで保険業の外資出資上限は74%だったため、残りの26%についてはインド側でビジネスパートナーを探す必要があった。今回の上限引き上げにより、外資系保険企業の単独出資が可能となることで、インド国内での事業設立が簡素化され、外資系保険企業の増加と保険業界における競争環境の変化につながることが予想される。
(3)デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
外資系保険企業は、人工知能(AI)を活用した引受プロセス、顧客サービスを導入するケースが近年多く、発展途上段階にあるインドの保険業界に変革を起こす可能性がある。
(4)インド国内の保険加入者の増加・普及率の向上
保険業界の開放は、インド政府が2047年までに全国民に保険を提供するという国家政策「インシュランス・フォー・オール」(2025年6月9日記事参照)と合致しており、外資保険企業の誘致が進むことで、インド国民の保険普及率の向上につながることが期待される。
(野本直希)
(インド)
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