インド、不適切な販売がまん延、生命保険の約半数が5年以内に解約

(インド)

調査部アジア大洋州課

2025年06月16日

インドでは、保険・投資信託などの金融商品が消費者の利益を考慮せずに不適切に販売されていると、インドの個人金融アドバイザリー会社ワン・ファイナンス(1 Finance)が実施した調査で報告された(「フィナンシャル・エクスプレス」紙6月9日)。インドの大手生保会社10社(注1)の保険契約をみると、契約締結時から5年後にあたる61カ月目継続率(注2)では、大部分の会社が50%前後だ(添付資料表参照)。これは、保険契約締結後、約半分の契約で5年以内に保険料の支払いが停止されていることを示している。また、契約から1年後に当たる13カ月目継続率についても、日本の大手生保会社(日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命)が各社とも約95%水準なのに対し、インドの保険会社は約80%前後と、相対的に継続率が低い。

また、同調査では、保険契約が短期間で解約に至る理由として「保険商品の仕組みについて誤解していた」、または「経済的に困難になり、保険料の支払いが継続できなかった」ことを示している。このように、顧客の求める保障内容や貯蓄に沿わない商品が販売されていることが指摘されており、特に銀行を通じた保険商品の不適切な販売がまん延しているという。2024年度(2024年4月~2025年3月)時価総額上位15行は、保険・投資信託などの金融商品の販売で総額2,177億3,000万ルピー(約3,701億4,100万円、1ルピー=約1.7円)の手数料収入を得ていたことが明らかになった。

インド準備銀行(RBI、中央銀行)のM・ラジェシュワル・ラオ副総裁は6月5日、ムンバイで開催された香港上海銀行(HSBC)主催のイベントで、金融包摂(注3)に関するスピーチを行い、保険商品をはじめとした金融商品の不適正販売に言及して、「不適切な販売に対処するためのガイドライン策定の必要性について、今後検討していく」と述べている。

(注1)インド保険規制開発局(IRDAI)が公表している「Handbook on Indian Insurance Statistics 2023-24」から保険料収入上位10社を抽出。

(注2)生命保険契約が締結された後、61カ月目に有効に継続している保険契約の割合。

(注3)RBIによると、社会のあらゆる層(特に社会的弱者層や低所得者層)が必要とする適切な金融商品・サービスへのアクセスを公平で透明性のある方法で、手頃なコストで確保するプロセスと定義されている。

(野本直希)

(インド)

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