中国、G20でグリーン鉱物資源の国際協力に関するイニシアチブを発表

(中国、南アフリカ共和国、アフリカ、中央アジア)

調査部中国北アジア課

2025年12月08日

中国商務部によると、李強首相は11月22~23日に南アフリカ共和国・ヨハネスブルクで開催された第20回G20サミットに出席し、「グリーン鉱物資源の国際経済貿易協力イニシアチブ」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。

商務部によると、同イニシアチブは、2024年のG20サミットにおいて習近平国家主席が表明したもので、本サミット期間に中国が関係国と共同で提出した。同イニシアチブは、(1)開放的で安全な政策環境の構築、(2)グリーン貿易の自由化・円滑化の促進、(3)社会的責任の履行、(4)より多くの人々への恩恵の波及、(5)技術交流とキャパシティービルディングの深化、(6)投融資協力の強化、(7)多国間協力メカニズムの深化の7項目から構成されている。また、イニシアチブでは、鉱物資源分野におけるグリーントランスフォーメーション(GX)と持続可能な発展を実現する道筋は、鉱物資源の開発、生産、使用、回収などの全プロセスのグリーン化を含むものと定めた。

グリーン貿易の自由化・円滑化に関しては、各国のグリーン工業化の努力を支持し、グリーン鉱物資源のサプライチェーンの安定を維持すること、グリーン関連産業の促進政策を策定する際にはWTOルールを順守すること、業界団体や国際機関に対してグリーン鉱物資源などの環境製品・サービスのリスト策定を奨励することなどを盛り込んだ。

商務部は、同イニシアチブを通じて、開放的、互恵的かつ公正で合理的な新型の鉱物資源協力パートナーシップを構築すると表明している。なお、現時点で同イニシアチブには20数カ国の国および国際機関が加入あるいは支持していると明らかにしており、より多くの国や機関の加入・支持を歓迎するとした。今後、関係国と共同で具体的措置を実施し、実務協力を進めるとしている。

なお、同じく今回のG20サミットにおいて、中国と南アが共同で発表した「アフリカの現代化を支持する協力イニシアチブ」の中でも、各国にグリーン鉱物資源に関する国際協力の強化を呼びかけたほか、責任・透明性・安定性・強靭(きょうじん)性のある重要鉱物サプライチェーンの構築やバリューチェーンの安全性確保などが盛り込まれている(注2)。

中国は既に、他地域との間でグリーン鉱物資源などの協力を推進している。6月17日にカザフスタン・アスタナで開催された第2回中央アジア+中国首脳会議(2025年6月27日記事参照)で署名された「アスタナ宣言」では、グリーン鉱物資源が6つの優先協力分野の1つに位置づけられ、鉱物資源の開発・利用および全産業チェーンに渡る協力や各国での地質調査、鉱物資源探査、グリーン鉱業開発の可能性を検討することが盛り込まれた。

(注1)同イニシアチブでは、「グリーン鉱物資源」とは、グリーン低炭素関連産業が必要とする鉱物資源の責任ある開発・掘削や貿易、最大限に持続可能性を高めた採掘、エネルギー消費・排出の削減、水や土壌などの資源保護、技術・標準などを指すものとしている。

(注2)G7諸国は6月15~17日にカナダ・カナナスキスで開催したG7サミットにおいて、重要鉱物の責任ある採掘、加工、貿易の実際のコストを反映した、基準に基づく市場の構築や重要鉱物生産同盟(Critical Minerals Production Alliance)の立ち上げなどを盛り込んだ「重要鉱物行動計画」を採択した(2025年6月23日記事参照)。中国外交部はこれについて、「小集団」の規則による国際経済貿易ルールの破壊であると反発し、こうした行為をやめ、G7諸国が市場経済原則や国際経済貿易ルールを順守するよう求めている。

(小宮昇平)

(中国、南アフリカ共和国、アフリカ、中央アジア)

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