G7首脳、重要鉱物・AI・量子技術など6分野で共同声明を採択

カナダのアルバータ州カナナスキスで6月15～17日、主要7カ国首脳会議（G7サミット）が開催された。G7メンバー（フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EU）に加え、北大西洋条約機構（NATO）、国連、世界銀行や、オーストラリア、ブラジル、インド、メキシコ、南アフリカ共和国、韓国、ウクライナの首脳が招待国として参加した。インドネシアやサウジアラビア、アラブ首長国連邦（UAE）の首脳も招待されたものの、出席には至らなかった。

今回のサミットは、地政学的緊張の高まり、経済不安、気候変動による自然災害の頻発といった課題を踏まえ、「地域社会と世界の保護」「エネルギー安全保障の構築とデジタル移行の加速」「経済連携の確保」の3分野を優先議題に議論がなされた。各国から協調的な姿勢が示され、次の6項目の共同声明を採択し、具体的な取り組みを進めることで合意に至った。

• 重要鉱物に関する共同声明：持続可能で信頼性の高い重要鉱物のサプライチェーンを構築し、未来の経済基盤を強化するため、カナダ主導で新たに重要鉱物生産同盟（Critical Minerals Production Alliance）を立ち上げる。
• 人工知能（AI）の繁栄に向けた共同声明：AIの現在と未来を支えるため、安全性と信頼性を重視したAIの導入を進め、情報格差（注）の解消を目指す。
• 量子技術の未来に向けた共同声明：経済成長、地球規模の課題解決、地域社会の安全確保に向けて、量子技術の可能性を最大限に引き出すための協力を強化し、促進する。
• 山火事対策に関する共同声明：世界的に増加する山火事の予防、対応、復旧に関する国際的な協力を強化し、被害の軽減を図る。
• 国境を越えた弾圧に関する共同声明：外国からの干渉、特に国境を越えた弾圧に対抗する取り組みを継続し、民主的価値を守る。
• 移民密輸対策に関する共同声明：移民密輸に関与する国際的な犯罪組織を解体するための協力を強化する。

議長要約では、G7首脳による、ウクライナにおける停戦の実現に向けた支援の継続や財政・防衛・復興面での支援強化の確認、ロシアに対する制裁拡大の検討、NATOと連携した平和維持と他国からの干渉防止に取り組む姿勢の再確認を発表。また、中東情勢については、ガザでの恒久的な停戦、人道支援の円滑な提供、人質解放の重視、交渉による政治的解決の支持が示された。

なお、今回のG7では、米国のドナルド・トランプ大統領が中東情勢を受け（2025年6月13日記事参照）、G7の開催期間中に途中帰国したことで、各国で意見をまとめることができなかったことや、諸問題に対する各国の意見の相違から、包括的な首脳宣言（コミュニケ）の発表は見送られた。

（注）インターネットやパソコンなどの情報通信技術を利用できる者とできない者との間に生じる格差のこと。

（井口まゆ子）