ジェトロが「水素等エネルギーセミナー」開催、現地最新動向や参入の鍵について解説
(日本)
調査部国際経済課
2025年12月05日
ジェトロは12月2日、東京都内の会場で「水素等エネルギーセミナー~日本企業は海外の水素市場にどのように向き合うべきか」を開催し、エネルギー企業、機器メーカー、素材メーカーを中心に89人が参加した。セミナーは2部構成で開催され、ジェトロのヒューストン事務所(米国)、リヤド事務所(サウジアラビア)、デュッセルドルフ事務所(ドイツ)、シドニー事務所(オーストラリア)の各所長が登壇し、各国における水素などのビジネスの最新動向や今後の展望について解説した。
第1部では、ジェトロ調査部の清水幹彦主任調査研究員が日本のエネルギーを取り巻く環境の変化と今回説明する4カ国の位置づけや政策の概略について解説し、国別のパートでは各地域の政策、法制度、現地企業の動きなどについて各所長が講演した。ヒューストン事務所の島田英樹所長は、トランプ政権発足後の水素ビジネスの変化や現地企業が抱える課題について解説し、水素オフテイカー(引き取り手)の不在が足元の大きなボトルネックであると指摘した。リヤド事務所の星野昌志所長は、サウジビジョン2030(注)に基づく同国における大規模再エネプロジェクトの紹介、および日系企業の現地参入状況について解説した。デュッセルドルフ事務所の菅野一義所長は、ドイツのメルツ新政権が推進する、より現実的かつ経済合理的なエネルギー政策について解説し、国内の水素需要喚起の大型プロジェクトも「ゆっくりながらも動いている」と説明した。シドニー事務所の渡邊尚之所長は、2024年改定の国家水素戦略ではグリーン水素に焦点が置かれていると紹介したうえで、国内産業向けの「地産地消」案件は需要を前提としており、立ち上がりが早いと説明した。
水素案件参入の鍵:現地水素コミュニティ参画と日系企業連携
第2部では、ジェトロ・サステナブルビジネス課の古川祐課長が、ジェトロの脱炭素分野の一元窓口として、2025年4月に新設した同課について紹介した。その後、パネルディスカッション形式で(1)水素関係者(地場、日本企業、政府など)から聞こえてくる声、(2)各地で注目されるエネルギーやその他関連テーマ、(3)現地水素案件に入り込むために日本企業に求められていること、の3つのテーマについて議論を行った。現地水素案件に入り込むために日本企業に求められていることについては、現地の水素コミュニティにうまく入り情報収集することや、日本企業同士の横で連携することが重要な点などの指摘があった。
講演の最後には、電解槽の導入で世界をリードする中国企業(2025年10月9日記事参照)の現地での存在感について質問があった。菅野所長は、EUでは「欧州水素銀行(EHB)」における直近の入札要件として、電解装置の少なくとも75%は中国以外の国で製造していることを明示していると説明し、星野所長は、サウジアラビアではコスト面で競争力を持つ中国企業との連携がみられると、それぞれの見解を示した。
パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)
セミナーの様子(ジェトロ撮影)
(注)2016年4月に発表された、石油依存から脱却するための国家成長戦略。「多様化」と「民営化」をキーワードとし、GDPの民間部門の貢献比率を40%から65%に上げる目標がある(2016年9月15日記事参照)。
(成瀬杏子、峯裕一朗)
(日本)
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