米大手自動車メーカーなど、「中国製自動車は国家安全保障に差し迫った脅威」と警告
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年12月16日
ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタなど主要自動車メーカーから構成される自動車イノベーション協会(AAI)は12月11日、米国連邦議会下院の中国特別委員会の公聴会に提出した声明で、中国の自動車メーカーおよびバッテリーメーカーが米国自動車産業にとって「明白かつ差し迫った脅威」であると指摘した。中国政府主導の補助金政策や過剰生産、不公正な貿易慣行、知的財産侵害、サイバーセキュリティー上のリスクなどが、米国の競争力と国家安全保障を損なうと警告した。
声明によると、中国は国内需要を大きく上回る自動車の生産能力を有し、余剰分を欧州や東南アジア、南米諸国などに低価格で輸出している。バッテリーの生産能力に関しても、中国国内需要の2倍と世界需要をも上回る水準に達しており、こうした慢性的な過剰供給がダンピングにつながると指摘した。
また同協会は、中国が既存の貿易障壁を回避し、世界的に自動車生産拠点を拡大するため、ハンガリーやブラジル、タイなど第三国での車両生産拠点の開設を進めている点にも言及。米国議会とトランプ政権に対し、中国政府の支援を受けた自動車・電池メーカーが米国内で製造拠点を設立することを阻止すべきだと訴えた。
コネクテッドカー分野では、中国など懸念国由来の情報通信技術・サービスの輸入を禁止する商務省の現行規制を支持し、国家安全保障上の重要性を強調した(注1)。さらに、半導体や重要鉱物については、国内供給拡大と同盟国との協力を通じた供給網強化の必要性を指摘する。重要鉱物の加工工程では中国が世界の処理能力の大半を握るとして、米国内での加工能力強化や需要の安定化策も求めた。自動運転や電気自動車(EV)、人工知能(AI)など次世代技術での米国主導の重要性にも触れ、同協会は、議会・政権と連携して対応する姿勢を示した。
米国では1974年通商法301条の活用に加え、上述のコネクテッドカーの中国由来技術の輸入・販売禁止や、バッテリー生産向け税額控除において中国企業の関与を排除する要件を追加するなど、サプライチェーンからの脱中国を進めている。一方、バッテリー材料やモーター用レアアースなど、安全保障上重要な分野などで依然として中国への依存が大きく、供給網の立て直しには時間を要するとの指摘もある(2025年12月4日付地域・分析レポート参照)。こうした中、クリーンビークル(CV、注2)購入に対する税額控除の撤廃や、環境規制の緩和といったEV普及を減速させる政策も打ち出されており、対中依存低減を目指す政策との関係性が注目される。
(注1)中国(香港、マカオを含む)とロシアが関係するコネクテッドカーの米国への輸入・販売を禁止する最終規則が2025年3月に発効した。1万1ポンド(約4,536キログラム)未満の乗用車について、(1)ソフトウエアは2027モデルイヤーから、(2)ハードウエアは2030モデルイヤー(モデルイヤーのない構成品は2029年1月1日)から適用される(2025年6月11日付地域・分析レポート参照)。
(注2)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。
(大原典子)
(米国、中国)
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