英政府機関、エネルギー網強化に向けて280億ポンドの投資を発表

(英国)

ロンドン発

2025年12月10日

英国政府機関のガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)は12月4日、送電網の強化および容量拡張に向けて、電力事業者に280億ポンド(約5兆7,960億円、1ポンド=約207円)の資金を投じると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政府が掲げる脱炭素化目標および「クリーンパワー2030アクションプラン」(注、2025年4月25日記事参照)を達成するため、安全性・信頼性が高く、かつ低コストの電力システムを構築する必要があることを理由としている。

この資金は今後5年間で全国80件の送電プロジェクトや関連工事に充当される。内訳は、約178億ポンドがサイバーセキュリティ対策やガスパイプ交換などのガスネットワーク維持に、残りの約103億ポンドは老朽化した送電インフラの更新や新たな送電インフラへの投資による送電ネットワークの信頼性向上・容量拡大などに振り分けられる。例えば、現行の送電網では容量不足により洋上風力発電所の電力を十分に送電できない課題があり、今回の投資によりシステムの非効率性の改善を図る。

政府が秋季予算案で平均的な1家庭あたりの年間エネルギー料金を約150ポンド削減すると公表していたにもかかわらず(2025年12月2日記事参照)、今回のインフラ整備費用の計上により、同金額は年間約108ポンド増加する見込みとなる。このうち48ポンドはガス料金、60ポンドは電気料金の上昇要因とされる。しかしOfgemは、送電網投資に伴うコスト削減効果と再生可能エネルギーの利用拡大による価格安定化により、平均家庭負担額を年間約80ポンド節約できると説明している。これにより最終的な負担額の純増分は年間約30ポンドにとどまるという。

(注)2030年までに電力システムの95%を低炭素発電で賄うことを政府目標として掲げる。

(バリオ純枝)

(英国)

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