日本、COP30で脱炭素化と経済成長推進の両輪を目指すことを強調

(日本、ブラジル)

調査部調査企画課

2025年12月25日

石原宏高環境相はブラジルのベレン市で11月10~22日に開催された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)(2025年12月4日記事参照)に参加した。ナショナルステートメントでは、日本の「国が決定する貢献(NDC)」(注1)と呼ばれる国別排出削減目標について触れ、2050年にネットゼロを目指す姿勢を示した。NDCはパリ協定に基づき、5年ごとに提出・更新する義務があり、今回のNDCに基づき、2035年度、2040年度において温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す。

日本政府はNDC発表日と同日の2月18日、地球温暖化対策推進法に基づいた政府の総合計画の「地域温暖化対策計画」、脱炭素成長型経済に向けたGX投資の予見可能性を高めるための長期的方向性を示す「GX2040ビジョン脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」、エネルギーの安定確保を前提に、経済成長と脱炭素の両立を目指す「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定した。排出削減目標達成のためこれらの対策、施策を一体的に実施するとしている(注2)。今回のCOP30で日本政府が発表した「日本気候変動対策イニシアチブ2025PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」でも、上記の計画を踏まえ、温室効果ガス削減目標と整合性のとれた脱炭素化への日本の貢献を掲げた。同イニシアチブのうちの1つである「ソリューション」では、市場メカニズムに基づく新技術の活用が掲げられており、2国間クレジット制度(JCM)(注3)を活用した国際事業の後押し、新技術の開発、実証および実装に関する革新的な取り組みを推進することが明記されている。

そのほか、日本はCOP30の会期中、ブラジル、イタリア、インドを含む23カ国とともに、2035年までに、水素、バイオ燃料、合成燃料などの持続可能な燃料の生産と利用を4倍以上にするという世界的目標を掲げる「ベレン持続可能燃料4倍宣言」にも参加(2025年12月4日記事参照)。ガソリンへのバイオエタノール導入拡大の方針は上述の「第7次エネルギー基本計画」に位置付けられており、2040年度からの最大濃度20%の低炭素ガソリン供給追及に向け、まずは2030年度の最大濃度10%の低炭素ガソリンの供給開始を目指す(注4)。

(注1)環境省「日本のNDC(国が決定する貢献)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を参照。

(注2)環境省「環境省説明資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」参照。

(注3)日本とパートナー国の間で、日本の企業や政府が技術や資金の面で協力して対策を実行し、得られる、温室効果ガス(GHG)削減・吸収量を、両国の貢献度合いに応じて配分する仕組み。COP29においてもJCMの利用拡大が目指されている(2025年2月20日付地域・分析レポート参照)。

(注4)経済産業省「ガソリンのバイオエタノール導入拡大に向けたアクションプランについてPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」参照。

(小林美晴)

(日本、ブラジル)

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