米国際貿易裁判所、IEEPA関税の清算手続きの仮差し止め要求を棄却、清算後も還付可能と判断
(米国)
ニューヨーク発
2025年12月17日
米国国際貿易裁判所(CIT)は12月15日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の清算手続きの仮差し止めを求めた企業の訴えを退けた
。現在進行中のIEEPA関税の合法性を巡る裁判で、仮に最高裁判所が違法と判断した場合、トランプ政権がこれまでに徴収した関税の還付を約束していることなどを根拠に判断した。
米国では、輸入者が輸入時に納入する関税は推定関税(Estimate Duty)となっており、米国税関・国境警備局(CBP)はその後、通常314日以内に確定関税を通知する。ここで推定関税と差異があれば、この差額分が徴収もしくは還付される。これを関税清算(Liquidation)という(注1)。IEEPAに基づく関税措置は、その合法性を巡って、現在、最高裁で審理されており(2025年11月7日記事参照)、原告側は、仮に最高裁によって違法と判断されたとしても清算を差し止める仮差し止め命令がなければ、訴訟係属中に支払った、または支払う必要のある関税の全額還付を受ける権利が危うくなる可能性があると主張していた。
こうした企業側の主張に対し、CITは、裁判所が再清算を命じる権限を有していること、トランプ政権が「裁判所が再清算を命じる権限に異議を唱えない」「当該関税が違法に徴収されたとする最終的かつ上訴不能の決定が下され、被告(トランプ政権)に還付を命じた後、違法に徴収したと認定されたIEEPA関税を全額還付する」と明らかにしていること、こうしたトランプ政権の主張は「禁反言の法理(注2)」により覆されないことなどから、IEEPA関税の清算後も企業は「回復不能な損害」を被る可能性はないと判断し、清算手続きの仮差し止めを求めた企業側の訴えを棄却した。
IEEPA関税を巡っては、違法に徴収した関税が還付されない、自動的に還付されるのは訴訟を起こした原告に限られる、といった可能性があることから、最高裁の判決が下される前からIEEPA関税の還付を求める訴訟が相次いでいた(2025年12月4日記事参照)。今回のCITの判決により、IEEPA関税が違法と判断された場合の還付の見通しは高まったが、還付を受けるために企業がCBPに申請をする必要がある場合(原告以外には自動的に還付されない場合)、対象者が多くなると見込まれることから、実際に還付されるまでには相当の日数がかかると予想される。IEEPA関税を巡る最高裁の審理の行方は、関税賦課の合法性に加え、違法と判断された場合の還付手続きも含めて、引き続き注視する必要がある。
(注1)清算後も異議申し立てはできるが、180日以内に行う必要がある。
(注2)一度主張した内容と矛盾する主張は許されないとする考え方。
(赤平大寿)
(米国)
ビジネス短信 93a1c80001655211




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